さぁ、月夜の舞踏会の始まりだ
ご婦人は綺麗に着飾って
紳士は格好よくビシッと決めて
招待状をお忘れなく
「お休みなさい。リズ、また明日」
パチンと部屋の電気を消す音がする。
「お休みなさい。ママ」
ベッドに横になった少女リズは、閉じられていく部屋のドアに向かって言った。扉の隙間から、微笑む母親の顔が見えた。
リズは瞳を閉じ眠りに入ろうとしたが、すぐに目を覚ましてしまった。
「やっぱり、まだ眠りたくなんて無いわ」
身体を起こすと小さく呟いた。傍らに倒れているウサギのぬいぐるみを抱き上げると、そっとベッドを抜け出した。真っ暗な部屋の中をそろそろと窓辺に近づいて行った。
「わあぁ・・・綺麗なお月様」
カーテンに頭を突っ込んで窓の外を見ると、外には蒼白く輝く月がリズを出迎えた。外は夜のはずなのに月明かりのせいだろうか、昼間のように明るい。
―月夜の舞踏会の始まりだ―
突然、風がサァーっと吹くとそれと同時に声が聞こえた。
リズは慌てて後ろを向き、窓の外を見回した。しかし、人の気配など全くしない。
「ウサギさんにもお月様を見せてあげるね」
抱えていたウサギのぬいぐるみを自分の顔と同じ高さまで、持ち上げた。
カサリ
「ウサギさん・・・何か持ってる?」
ウサギのぬいぐるみの手には何か封筒のようなものがくっ付いていた。不思議に思いながらも、ぬいぐるみから封筒を取ると月の光に透かした。
中には紙が入っている。黒い文字で何か書かれているが、月の光に透かしただけでは何を書いてあるかなどさっぱりわからなかった。
―今宵、蒼い月夜の舞踏会に彼方を招待いたします―
封筒の中にはメッセージカードが一枚。
差出人も宛名も何一つ書いていない。
ふと、蒼白い月を見上げた。まるで、出て来いというかのように月は一層輝きを増している。
リズは部屋のドアへ近づくと、そっと聞き耳を立てた。両親が何時リズの部屋へ様子を見に来るかわからないからだ。
今日はまだ一回も様子を見に来てはいない。すると、トントン・・・と階段を上がってくる音が聞こえた。
「パパだわ!」
リズは慌ててベッドへ潜り込んだ。
ガチャリ
リズの部屋に誰かが入ってきた。
「リズ、ちゃんと寝ているね。よしよし」
リズの予想通り父親だった。父親はそっとリズの頭を撫でると、すぐに部屋を出て行った。
父親が部屋のドアを閉めることを確認すると、リズはそっと瞳を開いてまたベッドを抜け出した。
もう一度、月を見上げると先ほどと全く変わらない、蒼白い光を放っている。出ておいで・・・そうリズに誘いかけているように。
リズはクローゼットから薄手の上着を引っ張り出すと、ウサギのぬいぐるみを抱えたまま、窓から身を乗り出した。下を見ると、予想以上に高さがある。
足を滑らせないようにゆっくりと、屋根の上へと降たつ。
「えいっ!」
怖くて瞳を瞑ったままだったが、屋根の上からリズは一気に庭へ飛び降りた。
土の固くて痛い衝撃を覚悟していた。
しかし、着地の瞬間。まるでケーキを踏んだかのようにふわふわしていたのだ。驚いて足元を見ても、芝生があるだけ。
ポンっと踏んでみても、さっきとは違う固い土の感触があるだけだった。呆然と立ち尽くしていたが、リズは何かに導かれるように走りだした。道なんてわからないはずなのに、リズの足は自然と何処かへ向かっている。
そう、蒼白い月の光にでも導かれているように。
角を曲がり、坂を駆け下り、おお通りを横切る。
知っている町のはずなのに、何処か知らない町へ迷い混んだかのように、町全体が静まり返っていた。
走って、走って、ようやっとリズが立ち止まった時。
「こんばんわ、お嬢さん」
知らない青年に急に呼び止められたのだった。
続きは後日サイトへUPします。
☆コメント☆
前に言っていた「勝手につきのワルツ雑記」です。
創作って本当に久しぶりなんですが、結構楽しませていただきましたー。全部書いてしまおうかと思ったのですが、長くなり過ぎそうだったので今日はここまでです。
続きは後日の雑記かサイトの図書室へUPする予定です。
そのときに「勝手につきのワルツイラスト」もUPできたらいいですね。
リズと愉快な仲間達←オイ
本格的な内容はこの後なので、何時になるかはっきりとは言えませんが気になった方は見に来てくだされば幸いです!
それでわ、最後まで読んでくれた方ありがとうございました!
日々精進、有言実行を夢見て生きてます。