☆Last Up 2013.12.25 版権「※BL注意※欲しいものは一つだけ-2013 A・ミシェル生誕SS-
※童話「赤ずきん」を題材にした2次創作物です※
トントン、トントン
何者かが玄関の戸を叩く音が聞こえる。
深い深い森の中にぽつんと建つ一軒家には病気のおばあさんが住んでいた。
「はぁい、どなた?赤頭巾かい?」
ベッドに入ったままで、おばあさんは玄関に向かって言う。
1日の半分以上をベッドの中で過ごす病気のおばあさんの所には2日に1回赤頭巾と呼ばれる女の子がお見舞いにやってくる。
今日はその赤頭巾が尋ねてくる日なのだ。
しかし、おばあさんが声をかけても一向に玄関を叩いた主は返事をしない。
トントン、トントン
返事は無く、再び玄関の戸を叩く音が聞こえた。
「おまえさんは赤頭巾ではないのかい?」
戸を叩いた主が赤頭巾なのならば、おばあさんが返事をすればすぐに入ってくるはずなのだ。
しかし、おばあさんが返事をしても再び戸を叩くだけ。
おばあさんは不審に思いそっとベッドを出る。
足音を立てぬように、そろそろと玄関に近付いていく。
玄関の横の窓のカーテンの隙間からそっと外をうかがうと、そこに赤頭巾などは居なかった。
茶色い毛が全身を覆った大きな体、恐ろしい光を宿した大きな瞳。
玄関の戸を叩いた主はオオカミだったのだ。
「おまえさん、オオカミだね?私に何か用なのかい?」
おばあさんは椅子に腰掛けて戸の向こうのオオカミに尋ねた。
「おばあさん、私はオオカミではありません。赤頭巾です」
オオカミが赤頭巾の声を真似して返事をする。
その声は赤頭巾と到底似ても似つかぬようなしゃがれた声だった。
「そうかい。ところでその声はどうしたんだい?」
赤頭巾になりすましたオオカミにおばあさんはゆったりとした口調で尋ねる。
本物の赤頭巾が来るまでに、このオオカミを逃がしてやらなければならない。
そう、おばあさんはこの哀れなオオカミを逃がしてやらなければならないのだ。
「風邪を引いてしまったの」
そう言って、オオカミはワザとらしく咳をしている。
おばあさんに正体が見抜かれている事に、オオカミは気付いていないようだ。
「赤頭巾や、鍵は開いているよ。入っておいで」
戸の向こうのオオカミにおばあさんは入るように促す。
すると、待っていましたと言わんばかりにギギィと音を立てて玄関の戸が開いた。
どしどしと音を立ててオオカミがおばあさんの家の中へ入ってくる。
獲物を目の前にしてオオカミの大きな瞳がギラギラと輝く。
「いらっしゃい、オオカミさん」
おばあさんはオオカミに向かって微笑んで見せた。
「オオカミが目の前に居るって言うのに、あんた恐くないのかい?」
恐ろしいオオカミが目の前に居るというのに、叫び声も上げずに椅子に腰掛けるおばあさん。
オオカミにはさぞ不思議な光景だったに違いない。
恐がる素振りを見せるどころか、笑顔をむけているのだ。
「さぁね。で、おまえさんは私を食べに来たのかい?」
落ち着いた、尚且つゆったりした口調でおばあさんはオオカミに尋ねた。
「あんたみたいなばあさんでも、少しは腹の足しになるだろうからな。解ったらおとなしく・・」
「止めておきなさい。私を食べたら、おまえさん。殺されるよ?」
早速食事に取り掛かろうとするオオカミに、おばあさんは真剣な表情を向ける。
「殺されろ?誰にだよ」
「赤頭巾さ。あの子に掛かればおまえさんなんか恐るるに足らない」
おばあさんを食べてしまえば、オオカミはすぐに赤頭巾に殺される。
しかし、そんな話をオオカミが信じる訳がなかった。
大きな声を出して笑うオオカミ。
「ばあさんよ。そんな話誰が信じると思う?嘘にしては、もう一歩だな」
「信じるも信じないもおまえさん次第さ。もうすぐ赤頭巾がやってくる」
おばあさんは微笑む。
そんなおばあさんの様子を見てか、オオカミの表情も次第に曇り始めた。
噂程度だったが、狩人よりも恐ろしい赤い頭巾を被った女の子の話を聞いた事があったような気がする。
微笑んだままのおばあさんの顔をちらりと見た。
おばあさんが言っている事が本当ならば、自分はその女の子に殺されてしまう。
せっかくありついた獲物を食べてしまえば、殺されてしまうかも知れない。
「私は遅かれ早かれ死んでゆく身だが、おまえさんは違うだろ?」
オオカミとてこれが最後の晩餐になってしまうというのなら、病気のおばあさんなどでは無く、もっと美味しい獲物が良いに決まっている。
だが、この期をを逃してしまえば、またしばらく獲物にはありつけないかも知れない。
おばあさんの言葉にオオカミは迷ってしまった。
「こんな老いぼれを食べるのは止して、赤頭巾が来る前に逃げなさい」
頭の中で密かに葛藤を続けるオオカミに、おばあさんは思いも寄らぬ言葉を口にした。
自分を食べに来たオオカミに逃げろと言ったのだ。
「あんたを食べた後に、やってきた赤頭巾も食べてやるよ。ガキと一緒にあの世へ行くんだな」
オオカミはニヤリと笑っておばあさんを見た。
おばあさんを食べた後に殺されるなら、殺される前に赤頭巾も食べてしまえば良い。
そうすればオオカミはお腹いっぱいになる。それだけじゃなく、殺される心配もなくなるのだ。
おばあさんのいう事が本当だとは限らない。
狩人よりも恐ろしい女の子など只の作り話だ。
食べられないためにおばあさんが作ったインチキに違いない。
オオカミはそう考えたのだ。
「そうかい。じゃあ仕方がないね」
だったら私をお食べ、とおばあさんは微笑む。
そんなおばあさんの落ち着いた様子が妙に気持ち悪いと思う。
―狩人よりも恐ろしい赤い頭巾の女の子―
―私を食べたら、赤頭巾に殺される―
なにやらいろいろな物がオオカミの頭を駆け巡る。
オオカミは頭を横に勢いよく振ると、微笑むおばあさんをまっすぐに見つめた。
「いただきます」
―コレが最後の晩餐ね、オオカミさん―
おばあさんを胃に放り込む瞬間に、そんな声が何処からか聞こえた、そんな気がした。
トントン、トントン
何者かが玄関の戸を叩く音が聞こえる。
深い深い森の中にぽつんと建つ一軒家には病気のおばあさんが住んでいた。
「はぁい、どなた?赤頭巾かい?」
ベッドに入ったままで、おばあさんは玄関に向かって言う。
1日の半分以上をベッドの中で過ごす病気のおばあさんの所には2日に1回赤頭巾と呼ばれる女の子がお見舞いにやってくる。
今日はその赤頭巾が尋ねてくる日なのだ。
しかし、おばあさんが声をかけても一向に玄関を叩いた主は返事をしない。
トントン、トントン
返事は無く、再び玄関の戸を叩く音が聞こえた。
「おまえさんは赤頭巾ではないのかい?」
戸を叩いた主が赤頭巾なのならば、おばあさんが返事をすればすぐに入ってくるはずなのだ。
しかし、おばあさんが返事をしても再び戸を叩くだけ。
おばあさんは不審に思いそっとベッドを出る。
足音を立てぬように、そろそろと玄関に近付いていく。
玄関の横の窓のカーテンの隙間からそっと外をうかがうと、そこに赤頭巾などは居なかった。
茶色い毛が全身を覆った大きな体、恐ろしい光を宿した大きな瞳。
玄関の戸を叩いた主はオオカミだったのだ。
「おまえさん、オオカミだね?私に何か用なのかい?」
おばあさんは椅子に腰掛けて戸の向こうのオオカミに尋ねた。
「おばあさん、私はオオカミではありません。赤頭巾です」
オオカミが赤頭巾の声を真似して返事をする。
その声は赤頭巾と到底似ても似つかぬようなしゃがれた声だった。
「そうかい。ところでその声はどうしたんだい?」
赤頭巾になりすましたオオカミにおばあさんはゆったりとした口調で尋ねる。
本物の赤頭巾が来るまでに、このオオカミを逃がしてやらなければならない。
そう、おばあさんはこの哀れなオオカミを逃がしてやらなければならないのだ。
「風邪を引いてしまったの」
そう言って、オオカミはワザとらしく咳をしている。
おばあさんに正体が見抜かれている事に、オオカミは気付いていないようだ。
「赤頭巾や、鍵は開いているよ。入っておいで」
戸の向こうのオオカミにおばあさんは入るように促す。
すると、待っていましたと言わんばかりにギギィと音を立てて玄関の戸が開いた。
どしどしと音を立ててオオカミがおばあさんの家の中へ入ってくる。
獲物を目の前にしてオオカミの大きな瞳がギラギラと輝く。
「いらっしゃい、オオカミさん」
おばあさんはオオカミに向かって微笑んで見せた。
「オオカミが目の前に居るって言うのに、あんた恐くないのかい?」
恐ろしいオオカミが目の前に居るというのに、叫び声も上げずに椅子に腰掛けるおばあさん。
オオカミにはさぞ不思議な光景だったに違いない。
恐がる素振りを見せるどころか、笑顔をむけているのだ。
「さぁね。で、おまえさんは私を食べに来たのかい?」
落ち着いた、尚且つゆったりした口調でおばあさんはオオカミに尋ねた。
「あんたみたいなばあさんでも、少しは腹の足しになるだろうからな。解ったらおとなしく・・」
「止めておきなさい。私を食べたら、おまえさん。殺されるよ?」
早速食事に取り掛かろうとするオオカミに、おばあさんは真剣な表情を向ける。
「殺されろ?誰にだよ」
「赤頭巾さ。あの子に掛かればおまえさんなんか恐るるに足らない」
おばあさんを食べてしまえば、オオカミはすぐに赤頭巾に殺される。
しかし、そんな話をオオカミが信じる訳がなかった。
大きな声を出して笑うオオカミ。
「ばあさんよ。そんな話誰が信じると思う?嘘にしては、もう一歩だな」
「信じるも信じないもおまえさん次第さ。もうすぐ赤頭巾がやってくる」
おばあさんは微笑む。
そんなおばあさんの様子を見てか、オオカミの表情も次第に曇り始めた。
噂程度だったが、狩人よりも恐ろしい赤い頭巾を被った女の子の話を聞いた事があったような気がする。
微笑んだままのおばあさんの顔をちらりと見た。
おばあさんが言っている事が本当ならば、自分はその女の子に殺されてしまう。
せっかくありついた獲物を食べてしまえば、殺されてしまうかも知れない。
「私は遅かれ早かれ死んでゆく身だが、おまえさんは違うだろ?」
オオカミとてこれが最後の晩餐になってしまうというのなら、病気のおばあさんなどでは無く、もっと美味しい獲物が良いに決まっている。
だが、この期をを逃してしまえば、またしばらく獲物にはありつけないかも知れない。
おばあさんの言葉にオオカミは迷ってしまった。
「こんな老いぼれを食べるのは止して、赤頭巾が来る前に逃げなさい」
頭の中で密かに葛藤を続けるオオカミに、おばあさんは思いも寄らぬ言葉を口にした。
自分を食べに来たオオカミに逃げろと言ったのだ。
「あんたを食べた後に、やってきた赤頭巾も食べてやるよ。ガキと一緒にあの世へ行くんだな」
オオカミはニヤリと笑っておばあさんを見た。
おばあさんを食べた後に殺されるなら、殺される前に赤頭巾も食べてしまえば良い。
そうすればオオカミはお腹いっぱいになる。それだけじゃなく、殺される心配もなくなるのだ。
おばあさんのいう事が本当だとは限らない。
狩人よりも恐ろしい女の子など只の作り話だ。
食べられないためにおばあさんが作ったインチキに違いない。
オオカミはそう考えたのだ。
「そうかい。じゃあ仕方がないね」
だったら私をお食べ、とおばあさんは微笑む。
そんなおばあさんの落ち着いた様子が妙に気持ち悪いと思う。
―狩人よりも恐ろしい赤い頭巾の女の子―
―私を食べたら、赤頭巾に殺される―
なにやらいろいろな物がオオカミの頭を駆け巡る。
オオカミは頭を横に勢いよく振ると、微笑むおばあさんをまっすぐに見つめた。
「いただきます」
―コレが最後の晩餐ね、オオカミさん―
おばあさんを胃に放り込む瞬間に、そんな声が何処からか聞こえた、そんな気がした。
お久しぶりの更新です。
童話「赤ずきん」を題材にした2次創作です。
原型とどめてないですよね。赤ずきん好きな人にごめんなさいですね、はい。
ちなみに狩人さん出てくる予定はさっぱりありません。(笑)
内容も黒くするつもりです。既に黒い気がするのは気のせいですよ。←
いわゆるダークファンタジーですかね。
こんなん書きたくなったのはきっとハロウィンが近いからだ。
ということで。
もうちょっと続くダークな赤頭巾、良かったらお付き合いくださいませ。
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