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☆Last Up 2013.12.25 版権「※BL注意※欲しいものは一つだけ-2013 A・ミシェル生誕SS-
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※版権二次創作 フェア+コーラル(サモンナイト4)※






1年に1度お母さんに感謝する日。
あなたはどうやって感謝の気持ちを伝えますか?




お昼ご飯を食べて、最近いつも通う場所がある。
「コーラルちゃん、いらっしゃい」
目的地はミントの家・・・の庭だ。
ぺこリとお辞儀をすると、持参したジョウロにたっぷりと水を汲んだ
一目散に向かうのは研究のために植えられてる野菜畑の隅っこに置かれた植木鉢。
「少し・・・大きくなった、気がする・・・」
ミントから貰った種を植えてから1週間。
少しずつではあるが、すくすくと育っているように見える。
「コーラルちゃんが毎日たっぷりとお水をあげてるおかげね」
いつの間にか横にしゃがんだミントが言った。
コーラルは1週間ずっと毎日毎日足を運んでは一生懸命世話をしている。
花を育てるのは生まれて初めてだが、分からない事は何でもミントが教えてくれた。
「もう少ししたら、つぼみがもっと大きくなってキレイな花が咲くよ」
少しだけ膨らみ始めたつぼみを見ながら言った。
「母の日・・・間に合う?」
コーラルは期待を含んだキラキラとした瞳でミントを見た。
「うん、きっと大丈夫!」
ミントがにっこりと笑って言った。
母の日までもう少し、キレイな花を咲かせて大好きなお母さんにプレゼントする。
それだけじゃない。母の日はコーラルがお店の1日店長になる・・・予定だ。
事の発端は1週間前。




-1週間前-


「フェア・・あのお花何・・・?」
寝室の窓辺にちょこんと置かれた小さな植木鉢がある。
植木鉢を覗き込むと、青々とした葉っぱが顔を出していた。
眠い目を擦りながらふと目に入った謎の植木鉢がずっと気になっていたのだ。
「ん?ああ、カネルの花よ」
コーラルの問いに、パンをちぎって口に運びながらフェアは答えた。
「もうそんな時期なんだね、フェアさん」
いつものようにお昼を食べに来ているルシアンが言った。
そんな時期、とはどういう事なのだろうか。コーラルの疑問は膨らむばかりだ。
「何故カネルの花なんですの?花なんてたくさんありますのに」
リビエルも疑問を口にした。
確かに、育てるのならばカネルの花で無くても良いじゃないかとコーラルも思う。
「カネルの花じゃなきゃダメなのよ」
リシェルが頬杖を付いて、ぶんぶんとフォークを振り回しながら口を挟んだ。
この時期にしかもカネルの花でなくてはいけない事。何がなんだかさっぱりだった。
「カネルの花と言えば、懐かしいわねぇ。ね、アルバ?」
「アカネ姉ちゃん!昔の事はどうだって良いだろ!」
ニヤニヤと笑っているアカネにアルバが珍しく焦って反論している。
横目でちらっとフェアの顔を見ると、困ったような悲しそうな何とも言えない表情をしていた。
それ以上何も聞けなかった。聞いてはいけない気がした。


「ルシアン・・・さっきのお話、詳しく教えて・・・」
お昼が終わって、お屋敷へ帰ろうとするルシアンとリシェルを無理矢理捕まえて、話の続きをお願いした。
さっきのフェアの表情がどうしても気になって仕方がないのだ。
「うーん、どうしよう?姉さん?」
「良いんじゃないの?別に隠しておく事でも無いし」
神妙な面持ちのルシアンとは対照的に、リシェルはけろっとした態度だ。
コーラルはじっとルシアンを見つめた。
すると、ルシアンはしばらく考えた後ゆっくりと話始めた。
「もうすぐ母の日、なんだよ」
「・・・母の日??」
聞き慣れない言葉に、コーラルを含め御使い全員が驚きの表情を浮かべた。
母の日なんて言うものは聞いた事がない。
先代の記憶や知識にもそのような物は無かった。
「知らないのも無理はないわ。だってあいつのパパが言ってたんだもん」
明らかに知らないといったコーラル達の様子に、あっけらかんとした態度でリシェルが言った。
フェアの父親が言っていた、という事は彼の故郷の世界での風習なのだろう。
それならば御使い達が知らないのも、先代の記憶や知識に無いのも無理ない。
「母の日って言うのはね。1年に1度お母さんに感謝する日なんだって。カーネーションって花をプレゼントするらしいんだけど。」
「リインバウムにはそういう花は無いし。カネルの花がその花に似てるらしいわよ」
カーネーション、確かにそれも聞いた事が無い花の名前だ。
フェアはその母の日のためにカネルの花を育てているに違いないとコーラルは思った。
けれど、フェアの母親は彼女が幼い時に亡くなってしまっているはずだ。
どうやってプレゼントする気なのだろう??
いや、それよりもお母さんに感謝する日があると言うのなら、自分も大好きなお母さんに感謝しなければならない。
「・・・僕もフェアにプレゼント・・・したい」
キレイなお花をプレゼントして、「いつもありがとう」その一言を改めて伝えたい。
「あんたにお花なんて育てられんの?」
「失礼ですわよ!リシェル!」
ポロッと思った事を口にしてしまったリシェルにリビエルが突っかかる。
確かに、自分が花を育てるなどという事が出来るかどうかわからない。
もしかしたら、枯らしてしまうかも知れない。
「お花を育てるのも・・・経験・・・」
だよね、セイロンとセイロンを見やる。
扇子で口元を隠してはいるが、いつものあの全てを見透かしたような笑みを浮かべてるに違いない。
実は母の日も知っていたのではないかとさえ思えてくる。
「それならミントさんの所に行くと良いわ。フェアも毎年ミントさんに種を貰ってるはずだから」
グラスのジュースを一気に飲み干すと、リシェルが言った。
ここからコーラルの初めての母の日プレゼント作戦が始まったのだ。





「・・・早く大きくなぁれ・・・」
小さく呟いて、1番日当たりの良さそうな所へ植木鉢を動かす。
野菜を取りに来たフェアに見つかっては作戦が台無しなので、後で戻しておいて貰えるように頼んでミントの家を後にした。
もうすぐお昼休憩が終わる時間だ。
いつも以上にフェアにくっついて、仕事をしっかりと見ておかなければならない。
何故ならば、花をプレゼントしただけではコーラルの母の日は終わらないからだ。


それから毎日毎日コーラルはミントの所へ通った。
少しずつ大きくなるカネルの花を見て、フェアの笑顔を思い浮かべる。
キレイな花を咲かせる事が出来れば、きっとフェアは喜んでくれる。その一心だった。
「ねぇ、オヤカタ?きっとフェアちゃんは喜んでくれるよね?」
「ムイムイ!」
だって、コーラルちゃんはこんなに頑張っているんだもの。
毎日花の世話をしに来るコーラルをミントは優しい眼差しで見つめていた。



そして、母の日当日。
フェアは寝室で困り果てていた。
と言うもの。今朝珍しくコーラルが自分より早く起きていると思うと。
「・・・今日は僕達が頑張るから、フェアはお休み・・・」
と、言われ厨房から追い出されてしまったのだ。
ずっと働き詰めなフェアにとってお休みと言われても何をしたら良いのか。
「皇子様!シーツが逆さまですわ!」
「ちょっと、グランバルドォ?洗濯物落として歩かないでよ」
「ポムニットさん!!!!お鍋!お鍋!!」
さらに、家の至る所から聞こえてくる声に外の様子が気になって仕方がない。
出て行ってしまいたいのはやまやまだが、そうすると皆のせっかくの好意を踏みにじってしまう。
でも気になって気になって仕方がない。
「あ、カネルの花今年もキレイに咲いたなぁ・・・」
朝水をやるだけで、じっくり様子を見る事が出来なかった窓辺の植木鉢。
今年もピンク色のキレイな花が1輪風に揺れている。
その様子を見ているとなんだか妙に眠くなって来て、自然と瞼が重くなっていった。
みんな大丈夫かな?ミントお姉ちゃんも来てくれるって言ってたし、アルバも居るし。
眠りに落ちるまどろみの中でそんな事を考えていた。


母の日の今日はコーラルが1日店長だ。
と言っても、流石にに料理は作れないので、料理はポムニットとミントにお願いしている。
コーラルは他のみんなと一緒に料理を運んだり、掃除をしたり、洗濯をしたり。
とにかくいつも以上に率先して動いた。
寝室に入ったっきりで静かだけど、フェアはゆっくり休めているだろうか。
みんなの力を仮ながら何とか仕事をこなしながら、コーラルはそんな事を考えていた。
バタバタと慌しく動いていると、気が付くともうすぐお昼休憩の時間だ。
「ありがとうございましたー」
ランチの最後のお客さんを見送った後、コーラルはこっそりと寝室を覗いてみた。
ベッドの上で気持ち良さそうに寝ているフェアを見つけた。
起こさないようにそーっと扉を閉めて寝室に入ると、じっとフェアの寝顔を見つめた。
いつもコーラルより遅く寝て、コーラルよりも早く起きて働くフェア。
そんな彼女の寝顔を見る事が出来るのは非常に珍しいことだ。
ゆっくりと寝かせてあげたいが、そろそろお昼なので起きてもらわなければならない。
「・・・フェア、フェア起きて・・・お昼ご飯だよ」
ゆさゆさと体を揺すった。
やはり、相当疲れているのだろうか。なかなか起きてくれない。
「フェア、ご飯だよ・・・」
もう1度フェアの体を揺すった。
「うーん・・・?・・・コーラル??」
眠そうな目を擦って、フェアが目を覚ました。
ゆっくり休んでと言った手前、無理矢理起こすのは気が引けてしまうが。
起こさずに寝ていたせいでご飯を食いぱぐれるのはもっと気が引ける。
「お昼、食べよう?」
起き上がる手助けをしながら、フェアに言った。
フェアのこんな姿を見られるのは僕だけの特権だよね?そんな事を考えているのは内緒だ。

「遅いわよー!もうお腹ぺっこぺこだわよ」
フォークとスプーンを持った両手でどんどんとテーブルを叩きながらリシェルがぶーたれる。
テーブルにはポムニットお手製のお昼ご飯が並べられていた。
「フェア、今日はゆっくり休めていまして?」
「お休みなんて本当に久しぶりだからみんなの事が気になっちゃって」
リビエルの問いにフェアは正直に答える。
「そんな事言って、どーせ寝こけてたんでしょおー?寝癖付いてるわよー」
「良いじゃない?ちゃんと休めてるみたいだし」
リシェルのちゃちゃをフォローするようにルシアンが言った。
確かにさっきまでスヤスヤと気持ち良さそうに寝ていた、とコーラルは思う。
いつも無理をしているフェアが少しでもたった1日でも休めているなら嬉しい。
「でも、午後は何をしようか全然決めてないの。まさか寝て過ごしちゃう訳にもいかないし」
「全く、贅沢な悩みですわ」
困ったように笑うフェアに、呆れたようにリビエルが言う。
しかし、それだけ休み無く働く彼女にとって、仕事をしないと言うのは考えられない事なのだ。
「では、久しぶりゆっくりトレイユの町をお散歩なんてどうでしょう?」
コレは名案と言わんばかりに、ポンッと手を叩いてポムニットが言った。
「今更町を散歩して何が面白いのよー」
「ゆっくりとお散布するだけでも違った何かが見えてくるかも知れませんよ?」
しかし、リシェルがいともあっさりと切り捨てにかかる。
いつもならばここで引き下がるポムニットだが、今回はなんとか食い下がった。
コーラルとしては、フェアに散歩に出てもらった方が都合が良い。
こっそりと育てていたカネルの花の植木鉢を、これまたこっそりとミントの家から持ってくる事が出来るからだ。
「散歩かぁー。うん、参考にさせてもらうよ」
「ええ、是非にそうして下さいまし!」
ポムニットは満足そうに笑った。



みんなでお昼を食べた後。コーラルは一人ミントの家へ向かっていた。
大切に育てカネルの植木鉢をこっそりと運ぶためだ。
昨日までに大きく膨らんでいたつぼみはすっかりと花開いて、真っ赤な花が咲いていた。
「お花・・・咲いた・・・」
「コーラルちゃんが一生懸命お世話したからだよ」
生まれて初めて育てた花は、思わず見とれてしまうくらいにキレイだった。
自分にも花を育てる事が出来たという事が、なんだか嬉しく感じる。
「よし、じゃあリボンを付けてっと。フェアちゃんに見つからないうちに移動しようか」
「こっちは・・・ここに付けて・・・」
ミントが花と同じくらい真っ赤なリボンを植木鉢に付けてくれた。
その袖をくいくいと引っ張って、隣の植木鉢を指差す。
「こっちは切ってしまっても良いの?」
ミントの問いにコーラルはこくんと頷いてみせる。
この日のために育てたカネルの花は一つだけでは無かった。
一生懸命考えた母の日作戦に用意した花は二つ。
どちらもフェアのためにコーラルが一生懸命育てた花だ。
何故二つも用意したのかはミントにも解らないが、コーラルによればこれが今回の最大のサプライズらしい。
「はい、これで良いのかな」
一つは植木鉢に赤いリボンが、もう一つは一輪の可愛らしい花束に。
二つの花はそれぞれ異なる姿のプレゼントになった。
「・・・ありがとう」
「どう致しまして!それじゃ、そろそろ行きましょうか」
優しく微笑むミントに、控えめにお礼を言うとぺこりとお辞儀をした。
プレゼントの用意はバッチリだ。フェアは喜んでくれるだろうか。
そんな事を考えながら植木鉢を抱え込むと、ミントの後に続いてその場を後にした。
アルバが散歩に連れ出してくれているはずのフェアに遭遇しないように、細心の注意を払いながら。
「(お花・・・何処に置いたら見つからないかな・・・)」
悩んだ末に見つけた場所は、宿のカウンターの下。
そこなら今日は大丈夫なはず、そう思った。


ディナーの時間が終わり、最後のお客さんを見送るとようやっとみなの夕飯の時間だ。
プレゼントをお披露目する時間が刻一刻と迫るにつれコーラルは妙にそわそわしてしまう。
なんて言って渡そうか。ちゃんと「ありがとう」と言えるだろうか。
「(お母さん、いつもありがとう・・・。お母さん、いつもありがとう・・・)」
心の中で何度も何でも復唱をする。食事中のみなの会話など耳に入らぬほどに緊張していた。
夕飯の時間が終わり、食器を片付けた後。
コーラルはこっそりと隠して置いたカネルの花を持って、忍び足でそーっとフェアの真後ろに立った。
「フェア・・・あのね・・・」
声を掛けてから、服を掴んでくいくいと引っ張った。
「わっ!!コーラル、どうしたの?」
「コレ・・・母の日・・・プレゼント・・・」
驚いた表情で振り向いたフェアに一生懸命育てたカネルの花の植木鉢を差し出した。
フェアは今どんな顔をしているだろうか?緊張して、ぎゅっと目を瞑ってしまった。
ふわっと、暖かな感触がしたと思い恐る恐る目を開けると、植木鉢ごとフェアに抱きしめられていた。
「ありがとう、コーラル」
耳元で聞こえたフェアの声は微かに震えているような気がした。
喜んでくれているのだろうか。迷惑だったのだろうか。
ちらりとアルバの顔を見るとにっこりと笑って、小さくガッツポーズをしている。
「フェア・・・嬉しい・・・?」
「すごくすごく嬉しいよ!」
コーラルの問いにフェアは笑顔で答えてくれた。
それは、コーラルが見たかった最高の笑顔だ。
カネルの花プレゼント作戦は大成功だが、コーラルからのサプライズはもう一つある。
それらも成功させるために、コーラルはもう一度フェアの服を引っ張った。
「・・・母の日まだ・・・終わりじゃないよ・・・」
もう一つのサプライズ、それにはあの花も必要だ。
コーラルが母の日を知るきっかけとなったあの花が。


コーラルがフェアを連れて向かった先。
今はすっかり水が濁ってしまい町の住民からは「ドブ池」と呼ばれている場所。
そう、「望月の泉」だ。
「フェアが・・・お花育ててたのは・・・ここへ来るためでしょ・・・?」
何故かは解らないが、毎年大切に育てたカネルの花を泉に入れていると。
これはルシアンから聞いた話だった。
こっそりと持ち出したフェアが育てたカネルの花をそっと差し出した。
「そのために、リボン・・・付けてた、違うの?」
「・・・そうだよ。ここにお母さんが居る訳じゃないけど、思い出の場所だから」
お母さんに届く気がするんだ、そう小さく呟いく。
目の前のピンクの花をきゅっと握り締めた。
「・・・僕も、フェアのお母さんに・・・お花持って来たよ・・・」
ミントにラッピングして貰った花束を見せた。
フェアとフェアの母親似届くように願いを込める、これがサプライズの最後だ。
本当に届くかどうかなんて解らないけれど、きっと無意味なんかではない。
フェアがそう信じるのなら、コーラルも信じたい。たったそれだけだ。
「ありがとう・・・。お母さんに届くと良いな・・・」
きっと届く。そう願いを込めた花束を今年は二つ。
そっと泉に浮かべた。

「・・・お母さん、いつもありがとう」




全てのお母さんに感謝の言葉を・・・


END
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ゲーム(ポップン・サモン・ポケモンetc) 小説執筆 お絵描き
自己紹介:
小説家の卵の卵な管理人です。
日々精進、有言実行を夢見て生きてます。
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