☆Last Up 2013.12.25 版権「※BL注意※欲しいものは一つだけ-2013 A・ミシェル生誕SS-
硬く閉じられた扉の向こうには何がある
高い高い塀の向こうはどうなっている
中の世界しか知らない外の世界を知らない
外の世界を知ろうとも思わない
だって、それは過ぎた願いなのだから
ああ、まさに君は
いつもと変わらない景色にいつもと変わらない毎日。
朝起きればいつものように両親に挨拶すると、いつもと変わらぬ時間を過ごす。
高い高い塀の中に少女は一人。会話をするのは近くの森からやってくる小さな動物達だけ。人間の友達などいようものか。少女は学校に行っていない。
生まれてから数回しかあの高い塀の向こうに行ったことが無いのだ。少女が塀の外へ出ることを両親が許さなかった。
だから、外の世界を知りたいなどと少女は思わない。幾ら願っても叶う事の無い願いなのだから、思うだけ、願うだけ無駄だ。いつしかそう思うようになっていた。
少女は知っている。両親が自分を外へ出すのを許さない理由を。
「私が他の子供と違うから」
少女には不思議な力があった。
人間ではないモノと会話が出来る・・・他人から見れば普通ではないのだろう。
妖怪、幽霊、動物、植物ありとあらゆるモノの声が聞こえる。話が出来る。少女の力に両親は驚愕し、絶望した。何にも触れられぬように、誰にも悟られぬように両親は少女を屋敷の中へ閉じ込める。ありとあらゆるものから少女を守るために。
「お前、また私に会いに来たの?」
1匹の小鳥。蒼く輝く美しい翼を持った小鳥。
毎日のように少女の庭へ飛んでくる。
少女の肩の上に乗ると、何やら悲しそうに鳴いた。
「駄目よ。私はここからは出られないのよ」
小鳥は「会わせたい人が居る」と言った。この塀の向こうへ行こうと。しかし、少女は塀の向こうへ行くことを許されない。
外の世界を知りたいとは思わない。だって、それは過ぎた願いなのだから。
もう、外の世界を知ることはずっと前に諦めた。
「私にもお前のように翼があれば良かったのにね」
そうすれば、あのような高い塀も軽々と飛び越えていけるのに。
外の世界を知ることを諦めずに済んだかも知れないのに。
少女はこれからも外の世界を知ろうとは思わないだろう。ずっと、ずっと前に願うことを祈ることを止めてしまったのだから。知ることを諦めてしまったのだから。
小鳥はもう一度悲しそうに鳴くと、少女の肩の上から飛び立つ。
何度も何度も少女を振り返りながら塀を越えて姿を消した。
蒼く輝く美しい翼を持つ小鳥。もう、私に会いに来てはいけないよ・・・少女は小さな音にすら聞こえないような声で誰もいない空に向かって呟く。
少女をずっと見守ってきた、祖母のような大木が「可哀相な子だね・・・・」いつものように残念そうに、哀れむように枝をカサカサと鳴らす。
「いいのよ。これで・・・」
今の暮らしに不自由など何も無い。
少女は外に出てはいけないのだ。ずっと、両親にそう言われてきた。
今更外の世界を知りたいだなんて・・・・・・・。
硬く閉じられた扉の向こうには何がある
高い高い塀の向こうはどうなっている
中の世界しか知らない外の世界を知らない
外の世界を知ろうとも思わない
だって、それは過ぎた願いなのだから
幾ら祈ったところで、願ったところで
叶うはずなんて無い
だから、願うことも祈ることももう止めた
ああ、まさに君は
籠の鳥
籠の鳥が外に出たいと
再び願う日は、祈るときは
来るのでしょうか・・・・・・?
完
☆コメント☆
えーと・・・・なんてコメントしていいのか。
半分衝動で書いたものなので、「籠の鳥」という言葉の意味を履き違えてそうで怖いです。
いつもとはちょっと違う雰囲気で書いてみました。閉鎖空間に閉じ込められた少女の話。まぁ、今のご時世にこんなのがあるかなんて想像もできませんんね。
解説としては。
他の子供とは違った力を持った少女を、両親が家の敷地内から外へ出さないのです。
理由としては、外敵から大事な娘を守るため。少女だってそんなことはわかっています。
だから、外の世界を知りたいと思う事を止めた。知りたいと思う心を押し殺して封印してしまったんです。
それをどうにかしたいと思っているのが、蒼い小鳥さん。
少女の決心は固く、ちょっとやそっとじゃ揺らぎません。と、言うかもう外へ出るのは不可能だと思い込んでいるのです。
↑の文章では「駄目だ」って言われて、すぐに引き下がっちゃいますよね。もっと粘れよ!!鳥!!って思った方が多分いるのではないかと。
すぐ引き下がってしまっても、小鳥は何回でも少女のもとへやってくるのです。「外へ出よう」って言いに来るんです。
さて、この後の話は今のところ書かない予定。
なのでこの後の展開は読んでくださった皆様のご想像にお任せ致します。え?無責任?違いますよ。それぞれの解釈の方が、楽しいでしょ?
では、呼んでくださった方ありがとうございました。
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