6月からの梅雨の時期。
毎日のように降り続く雨。
今日は朝は晴れていたと言うのに今は土砂降りの雨が降っている。急に降り出した雨に人々は不満の声を上げながら、鞄やら紙袋やらを傘代わりにして走り出した。
「・・・・・・・」
そんな外の様子を無言で見つめている二つの小さな影があった。
精霊界創造の魔女ミントのところへ身を置く、雷の精霊ヴォルーナとそのパートナーもライザだ。慌しい外の様子をただじっと、無言で見つめている。
やがて、ヴォルーナが窓辺を離れるとライザも後へ続く。何処へ向かうのかと思いきや玄関にある薄い黄色のレインコートを引っ張り出した。
「おいおい、ちびすけ。そんなもん出して何処いくんだよ」
土の大精霊ロックがヴォルーナを呼び止める。
「雨・・お姉ちゃん・・・・・迎えに行く」
玄関から見える窓を指差した。確かに、外は土砂降りの雨だ。
彼女達の主であるミントとその護衛であるプラムが所用で出かけている。ミント達がここを出たときは外は雨など降っていなかったのだ。きっと傘など持って行っていないに違いない。
「お嬢達が傘無いってなんでわかる?」
もしかしたら、持って行っているかも知れない。ロックは何とかヴォルーナが外へ出るのを止めようとした。誰か一緒ならば問題は無いのだが、今はロックとヴォルーナ以外は何かしらの任務についている。
そのためロックがヴォルーナと一緒にここを空けることは出来ないのだ。
ましてやヴォルーナはまだ10歳だ。パートナーのライザが居るとはいえ、ヴォルーナ一人を外へ出すなど心配で仕方がない。
「お約束の時間・・・・・過ぎても・・帰って来ない・・よ?」
ヴォルーナがポツリと言う。ライザは「うんうん」と頷いた。
ロックが壁にかけてある時計を見やると、確かにミントが帰ってくると言った時間を大幅に過ぎている。それに、傘立てを見るとミントの水色の傘がしっかりと入っていた。
「わかった。じゃあ、オレが行って来るからお前は留守番してろ。良いな?」
ヴォルーナの頭を撫でながら、諭すように言う。
すると、ヴォルーナはライザの腕を掴んで「イヤイヤ」と首を振った。御揃いのレインコートと長靴を履いて、じっと玄関に立ってロックの顔を見つめる。
どうやらこの一人と一匹(体)はどうしてもミント達を迎えに行く気らしい。こうなってしまってはロックにはどうすることも出来ない。こういう時のヴォルーナを動かすことが出来るのは、主であるミントとヴォルーナの教育係を任されている、水の大精霊アクアだけだ。
はぁ・・・・とロックは大きくため息を付くと、靴箱の上に置いてあるメモ帳に何やらさらさらと書きはじめた。
「ほれ、コレがお嬢達が出かけたとこの地図な。落とすんじゃねぇぞ?」
書いたメモを見せながら簡単に説明してやると、「こくん」と小さく頷いてヴォルーナはそれを受け取った。二回折って、レインコートのポケットにしっかりとしまいこんだ。
「それから、それ見れも迷子になったら。バトルの時みたいにすぐ呼ぶんだぞ?」
ロックが自分の額を指でトントンと軽く叩く。すると、ヴォルーナはもう一度「こくん」と小さく頷いた。敵との戦闘中に仲間である他の精霊達との連絡をとる手段。つまりテレパシーだ。
普段の生活で使うことはあまり好ましいことではないが、場合が場合だ。それに、たとえ咎められたとしても理由を話せば仲間達も納得してくれるだろう。
「よし、じゃあ行って来い!」
ポンポンと頭を撫でてやると、またヴォルーナは「こくん」と頷いた。
くるりとロックに背を向けると、傘立てからミントの水色の傘を引き抜き外へ続く戸を開ける。
「お兄ちゃん・・・」
「んぁ?」
「ありがとう・・・・行ってきます・・・・」
「おぅ、行って来い」
背を向けたまま少し恥ずかしそうにヴォルーナが言った。
ロックは普段ヴォルーナにお礼を言われることなどほとんど無い。少しばかり驚きはしたものの外へ出て行くヴォルーナの背中をそっと送り出した。
(帰ってきたお嬢に怒られませんように)
そんなこと思いながらではあったが・・・・・。
大きな水溜りの中をざぶざぶと歩きながら、ヴォルーナとライザはミント達の元へと歩いていく。
時折立ち止まってはロックに渡されたメモを見る。ライザと相談をしていく道を決めた。
ライザと御揃いの薄い黄色のレインコートと濃いピンク色の長靴。これらはヴォルーナの大好きな主、ミントが用意してくれたものだ。
もうすぐ梅雨の季節だからと、ミントが新しいレインコートと長靴を用意してくれた。いつもはヴォルーナの分だけなのだが、今回はライザの分もある。しかも御揃いだ。
ライザと御揃いのレインコートが着たくて、御揃いの長靴が履きたくて、早く梅雨の季節にならないかなとヴォルーナはずっと思っていた。
「ライザ・・・・・道そっちじゃないよ」
ヴォルーナはライザと御揃いなのが嬉しくてしょうがなかった。どうしても、ライザと一緒にこのレインコートと長靴を身に着けて雨の中を歩きたかった。
だから、ロックに無理を言って外へ出てきたのだ。我がままを言ってしまったのがミントに知れれば、怒られてしまうだろうか。そんな不安も少しはあった。
「怒られると思ってんのか?」
メモを見て少しだけしょんぼりとしたヴォルーナの顔をライザが覗き込む。
ヴォルーナは小さく「こくん」と頷いた。レインコートの帽子にポツポツと当たる雨の音が少しだけ大きく聞こえる。
「怒られる時は俺様も一緒だろ」
くいくいとヴォルーナのレインコートの裾をライザが引っ張った。
いつも一緒。絶対に離れることの無い一心同体。親友のようなパートナーのような姉弟のようなかけがえの無い存在だ。ライザはヴォルーナの母親が亡くなってからずっと一緒に居る。亡くなったヴォルーナの母が残した形見の人形なのだ。
「そうだよね。ライザと・・・・ヴォルーナは・・いつも・・・一緒」
そうだ、悪いことをしてしまって怒られる時はいつもライザと一緒だった。嬉しそうに笑うと、しっかりとライザの手を握った。
もう一度メモを見てゆっくりと歩き出す。目の前に見える信号を渡って右に曲がるとミント達がいるであろう建物はすぐだ。
「困ったわねー。まさか雨が降ってるなんて思わなかったわ」
用事が済んでいざ帰ろうと外へ出てみると土砂降りの雨がお出迎え。傘を持っていないミントとプラムは困り果てながら、雨宿りをしていた。
「油断しましたねぇ・・・」
雨は一向にう止む気配がない。
それどころか時間が過ぎれば過ぎるほど酷くなっていっているような気さえする。
「いっそのこと走って帰りましょうか?」
「駄目です。ご主人様が風邪でも引いたらどうするおつもりですか」
雨の中に飛び込もうとするミントの腕を目にも留まらぬ速さで阻止した。
しかし、そろそろどうやって帰るか決めてしまわないと精霊達が心配しているころだろう。走って帰るか、止むまで待つか選択は二つに一つだ。
「僕は濡れても構いませんが、貴女が濡れてしまっては困りますね」
「まさか、服脱ぐなんて言わないでしょうね?」
「おや、正解です」
ミントが訝しげな目を向けると、プラムはにっこりと微笑む。
そして、上に着ている服を脱ごうとした。
「ちょっと待った!!!!ねぇ、あれってさ・・」
道の向こうから歩いてくる小さな二人組みが見える。見覚えのあるレインコートと長靴。鮮やかな紫色の髪の子供と大きな二つの耳を持ったウサギのような姿。
ちょこちょことこちらへ向かって歩いてくるように見える。
「!・・・お姉ちゃん・・・!お兄ちゃん・・・!」
ミントとプラムに気付くと、鮮やかな紫色の髪をした子供がたっとこちらへ駆け寄ってきた。
「ヴォルーナ!?」
「では、もう一人はライザですね。まさか、二人で迎えに・・・?」
駆け寄って来る子供はヴォルーナとライザだ。
二人の後ろから誰かが歩いてくるような気配はしない。どうやら、二人だけでここまで来たようだ。
「どうして、ここに?」
レインコートの帽子を外しヴォルーナとライザの顔を交互に見た。ヴォルーナとライザはすっとミントの水色の傘を差し出す。
「雨・・・降ってきたから・・・・お迎え・・・来たよ」
「俺様とヴォルーナに感謝しろよな」
ニッと笑うライザに、ミントとプラムは顔を見合わせた。
確かあそこには土の大精霊ロックに留守を任せて来たはずだ。同時にヴォルーナとライザを見ておくように言っておいたはずなのだが。
「ロックはどうしました?」
「ロックお兄ちゃん・・・悪くないよ・・・?」
プラムの問いに首を左右に振りながらも、ヴォルーナは訴えた。
不思議そうにミントがヴォルーナとライザを見る。どういう事なのだろうか、二人を迎えに来るのならば当然ロック一人か、ロックを含めた三人で来るものと思っていた。
「ヴォルーナが・・・・ライザと・・・・行くって言った。ロックおにいちゃんに・・・・言った」
「あいつはしぶしぶOKしたんだぜ」
ヴォルーナとライザの訴えにミントとプラムはもう一度顔を見合わせ、今度はお互いににっこりと微笑んだ。それから、ミントはヴォルーナとライザ二人の頭をくしゃくしゃt撫でた。
「そっか、よく二人で来られたね?偉いぞー」
するとヴォルーナとライザは嬉しそうに笑った。二人の今日一日での最高の笑顔だ。滅多に笑顔を見せることの無い二人の最高の笑顔。
「帰りましょうか」
ミントが言うと、ヴォルーナとライザが「こくん」と大きく頷く。
くるっと振り向くと目の前にある大きな水溜りにザブンっと勢い良く入っていった。
ミントの傘を広げる、そこまでは良いのだが。そこからどうしたものか、ヴォルーナが持ってきてくれたのはミントの傘一本のみ。つまりプラムの分の傘は無いのだ。
一本に二人で入ろうにもプラムのことだミントが濡れないようにすることを最優先に選ぶのに決まっている。
「猫になりなさいね?」
「・・・貴女にはかないませんね。かしこまりました。では肩の上をお借りしますね」
ミントに先手を打たれ、仕方なしにプラムは黒猫の姿になるとトンとミントの肩に乗っかった。ミントの肩の上は黒猫の姿になったプラムの所定位置だ。
プラムが肩に乗ったのを確認すると、ミントは傘を差してヴォルーナ達の後を追いかけていった。
「よっぽど、御揃いが嬉しかったのね」
「あの子達は姉弟のような感じですからね」
この日を境に雨の日のお迎え係りが、ヴォルーナとライザになったのは言うまでもない。これからまだまだ雨の降る季節。
次に彼方のお迎えに来るのはそんなヴォルーナとライザかも知れません。
END
☆コメント☆
雨の日に書こうと思っていた、オリジっこの雨の日雑記です。
書こうと思った時になかなか雨が降らずに今日がやっとのUPになります。いや、ぶっちゃけ雨は降らなくてもいいのだけどね。←
コレを読んでいる時に、皆さんの地方で雨が降っているといいです。その方がきっと雰囲気感じてもらえると思いますし。
今回のはオリジっこの二人(?)がメインの雑記です。
ヴォルーナとライザのコンビ。読んでて気付いた方がいるかと思われますが、文中み出てくる御揃いのレインコートと長靴とは、トップ絵のアレです。(笑)
実はアレを描いてる時に浮かんだネタだだったのですよ。なので、アレはそういう場面なんだって思っていただければ幸いです。
御揃いにしてもらったレインコートと長靴を早く活用したくて言った、ヴォルーナの小さな我がままですね。ほら、子供って新しいものを手に入れると早く使いたがるじゃないですか。そんな感じですね。
しかもそのとき丁度ミントとプラムが傘を持たずに出かけてたのです。
コレは行かずにいられません。さっそく準備をしますが、案の定保護者(っていうかこの場面では監視役みたいな感じですが)に見つかってしまいます。
留守番してろって言われても引きません。頑固一徹ですよ。←使い方間違ってないか?
何故でしょうね。一応ヴォルーナは10歳設定なのですが、必要以上に幼くなってしまう気がするんですよね・・・・。あんまり喋らない子って設定だからなのかな。
今回はほのぼの家族なイメージを目指したので、そんな雰囲気が出てるといいなって思います。
では、意味不はコメント含め最後まで読んでくださった方ありがとうございました。
硬く閉じられた扉の向こうには何がある
高い高い塀の向こうはどうなっている
中の世界しか知らない外の世界を知らない
外の世界を知ろうとも思わない
だって、それは過ぎた願いなのだから
ああ、まさに君は
いつもと変わらない景色にいつもと変わらない毎日。
朝起きればいつものように両親に挨拶すると、いつもと変わらぬ時間を過ごす。
高い高い塀の中に少女は一人。会話をするのは近くの森からやってくる小さな動物達だけ。人間の友達などいようものか。少女は学校に行っていない。
生まれてから数回しかあの高い塀の向こうに行ったことが無いのだ。少女が塀の外へ出ることを両親が許さなかった。
だから、外の世界を知りたいなどと少女は思わない。幾ら願っても叶う事の無い願いなのだから、思うだけ、願うだけ無駄だ。いつしかそう思うようになっていた。
少女は知っている。両親が自分を外へ出すのを許さない理由を。
「私が他の子供と違うから」
少女には不思議な力があった。
人間ではないモノと会話が出来る・・・他人から見れば普通ではないのだろう。
妖怪、幽霊、動物、植物ありとあらゆるモノの声が聞こえる。話が出来る。少女の力に両親は驚愕し、絶望した。何にも触れられぬように、誰にも悟られぬように両親は少女を屋敷の中へ閉じ込める。ありとあらゆるものから少女を守るために。
「お前、また私に会いに来たの?」
1匹の小鳥。蒼く輝く美しい翼を持った小鳥。
毎日のように少女の庭へ飛んでくる。
少女の肩の上に乗ると、何やら悲しそうに鳴いた。
「駄目よ。私はここからは出られないのよ」
小鳥は「会わせたい人が居る」と言った。この塀の向こうへ行こうと。しかし、少女は塀の向こうへ行くことを許されない。
外の世界を知りたいとは思わない。だって、それは過ぎた願いなのだから。
もう、外の世界を知ることはずっと前に諦めた。
「私にもお前のように翼があれば良かったのにね」
そうすれば、あのような高い塀も軽々と飛び越えていけるのに。
外の世界を知ることを諦めずに済んだかも知れないのに。
少女はこれからも外の世界を知ろうとは思わないだろう。ずっと、ずっと前に願うことを祈ることを止めてしまったのだから。知ることを諦めてしまったのだから。
小鳥はもう一度悲しそうに鳴くと、少女の肩の上から飛び立つ。
何度も何度も少女を振り返りながら塀を越えて姿を消した。
蒼く輝く美しい翼を持つ小鳥。もう、私に会いに来てはいけないよ・・・少女は小さな音にすら聞こえないような声で誰もいない空に向かって呟く。
少女をずっと見守ってきた、祖母のような大木が「可哀相な子だね・・・・」いつものように残念そうに、哀れむように枝をカサカサと鳴らす。
「いいのよ。これで・・・」
今の暮らしに不自由など何も無い。
少女は外に出てはいけないのだ。ずっと、両親にそう言われてきた。
今更外の世界を知りたいだなんて・・・・・・・。
硬く閉じられた扉の向こうには何がある
高い高い塀の向こうはどうなっている
中の世界しか知らない外の世界を知らない
外の世界を知ろうとも思わない
だって、それは過ぎた願いなのだから
幾ら祈ったところで、願ったところで
叶うはずなんて無い
だから、願うことも祈ることももう止めた
ああ、まさに君は
籠の鳥
籠の鳥が外に出たいと
再び願う日は、祈るときは
来るのでしょうか・・・・・・?
完
☆コメント☆
えーと・・・・なんてコメントしていいのか。
半分衝動で書いたものなので、「籠の鳥」という言葉の意味を履き違えてそうで怖いです。
いつもとはちょっと違う雰囲気で書いてみました。閉鎖空間に閉じ込められた少女の話。まぁ、今のご時世にこんなのがあるかなんて想像もできませんんね。
解説としては。
他の子供とは違った力を持った少女を、両親が家の敷地内から外へ出さないのです。
理由としては、外敵から大事な娘を守るため。少女だってそんなことはわかっています。
だから、外の世界を知りたいと思う事を止めた。知りたいと思う心を押し殺して封印してしまったんです。
それをどうにかしたいと思っているのが、蒼い小鳥さん。
少女の決心は固く、ちょっとやそっとじゃ揺らぎません。と、言うかもう外へ出るのは不可能だと思い込んでいるのです。
↑の文章では「駄目だ」って言われて、すぐに引き下がっちゃいますよね。もっと粘れよ!!鳥!!って思った方が多分いるのではないかと。
すぐ引き下がってしまっても、小鳥は何回でも少女のもとへやってくるのです。「外へ出よう」って言いに来るんです。
さて、この後の話は今のところ書かない予定。
なのでこの後の展開は読んでくださった皆様のご想像にお任せ致します。え?無責任?違いますよ。それぞれの解釈の方が、楽しいでしょ?
では、呼んでくださった方ありがとうございました。
ありがとう、ありがとう
深い、深い意味を持った言葉
嬉しい気持ちを伝える言葉
感謝の言葉 労いの言葉
一生懸命にやってあげた時
「ありがとう」
そう言われると、誰でも
笑顔になる 嬉しい気持ちになれる
明日を生きる勇気に希望になる
もう一度歩き出すきっかけになる
毎日を一生懸命に生きる全ての人へ
この言葉を捧げよう
この世の何処かで頑張っている彼方へ
「ありがとう」
☆コメント☆
今日、お客様に言われてすごく嬉しかった言葉です。
未経験の仕事で、しかもたった2日目で、他のスタッフに迷惑かけてないなんてはずがない。
ちゃんと仕事が出来ているかどうかさえわからないのに。
そんな新人の私に、お客様が言ってくれた一言。「ありがとう」この一言が泣きたくなるほど嬉しかった。頑張ろうって、思えた。
お客様は私が新人だなんて知らないかもしれないし、関係ないかも知れない。
でも、「ありがとう」この言葉は新人の私にとって何よりも嬉しい言葉。
あのときのあの気持ちは、忘れないでいたいな。今のバイトは何時まで出来るかわからないけど。
「ありがとう」って言葉は誰かを元気付ける、勇気付ける言葉であって欲しい。
感謝を伝える言葉であって欲しい。そんな思いです。
読んでくれた方ありがとうございました。
こちらは、「みんなの歌」「ポップンミュージック16」に収録されている「月のワルツ」を元に制作した創作小説です。
全て管理人の妄想により出来てしまった物のため、企業さま・歌い手さまとは全くの無関係です。
全て管理人の自己満足によるものです。読む方によっては本家様のイメージが崩れてしまうかも知れません。
登場するキャラクターなども管理人が勝手に作ったものなので、本家様には登場しません。お間違えの無いようにお願いします。
「勝手に創作!!!けしからん!!!」って方はプラウザバックまたは窓を閉じましょう。
「勝手に創作?どんとこいや!!!!」って方はそのまま↓へどうぞ。
さぁ、月夜の舞踏会の始まりだ
ご婦人は綺麗に着飾って
紳士は格好よくビシッと決めて
招待状をお忘れなく
―蒼い月夜の舞踏会―
「お休みなさい。リズ、また明日」
パチンと部屋の電気を消す音がする。
「お休みなさい。ママ」
ベッドに横になった少女リズは、閉じられていく部屋のドアに向かって言った。
扉の隙間から、微笑む母親の顔が見えた。
リズは瞳を閉じ眠りに入ろうとしたが、すぐに目を覚ましてしまう。
「やっぱり、まだ眠りたくなんて無いわ」
身体を起こすと小さく呟いた。傍らに倒れているウサギのぬいぐるみを抱き上げると、そっとベッドを抜け出した。
真っ暗な部屋の中をそろそろと窓辺に近づいて行った。
「わあぁ・・・綺麗なお月様」
カーテンに頭を突っ込んで窓の外を見ると、外には蒼白く輝く月がリズを出迎えた。
外は夜のはずなのに月明かりのせいだろうか、昼間のように明るい。
―月夜の舞踏会の始まりだ―
突然、風がサァーっと吹くとそれと同時に声が聞こえた。
リズは慌てて後ろを向いて部屋の中を見た。そして、今度は窓の外を見渡してみる。しかし、人の気配など全くしない。
「ウサギさんにもお月様を見せてあげるね」
抱えていたウサギのぬいぐるみを自分の顔と同じ高さまで、持ち上げた。
カサリ
「ウサギさん・・・何か持っているの?」
ウサギのぬいぐるみの手には何か封筒のようなものがくっ付いていた。
不思議に思いながらも、ぬいぐるみから封筒を取ると月の光に透かした。
中には紙が入っている。
黒い文字で何か書かれているが、月の光に透かしただけでは何を書いてあるかなどさっぱりわからない。
―今宵、蒼い月夜の舞踏会に彼方を招待いたします―
封筒の中にはメッセージカードが一枚。
差出人も宛名も何一つ書いていない。
ふと、蒼白い月を見上げた。まるで、出て来いというかのように月は一層輝きを増している。
リズは部屋のドアへ近づくと、そっと聞き耳を立てた。
両親が何時リズの部屋へ様子を見に来るかわからないからだ。
今日はまだ一回も様子を見に来てはいない。すると、トントン・・・と階段を上がってくる音が聞こえた。
「パパだわ!」
リズは慌ててベッドへ潜り込んだ。
ガチャリ
リズの部屋に誰かが入ってきた。
「リズ、ちゃんと寝ているね。よしよし」
足音の正体はリズの予想通り父親だった。父親はそっとリズの頭を撫でると、すぐに部屋を出て行った。
父親が部屋のドアを閉めることを確認すると、リズはまたベッドを抜け出して窓辺に近づく。
もう一度、月を見上げると先ほどと全く変わらない、蒼白い光を放っている。
出ておいで・・・そうリズに誘いかけているように。
リズはクローゼットから薄手の上着を引っ張り出すと、ウサギのぬいぐるみを抱えたまま、窓から身を乗り出した。
下を見ると、予想以上に高さがある。
足を滑らせないようにゆっくりと、屋根の上へと降たつ。
「えいっ!」
怖くて瞳を瞑ったままだったが、屋根の上からリズは一気に庭へ飛び降りた。
土の固くて痛い衝撃を覚悟していた。
しかし、着地の瞬間。まるでケーキを踏んだかのようにふわふわしていたのだ。驚いて足元を見ても、芝生があるだけ。
ポンっと踏んでみても、さっきとは違う固い土の感触があるだけだった。
呆然と立ち尽くしていたが、ふとリズは何かに導かれるように走りだした。
道なんてわからないはずなのに、リズの足は自然と何処かへ向かっている。
そう、蒼白い月の光にでも導かれているように。
角を曲がり、坂を駆け下り、大通りを横切る。
知っている町のはずなのに、何処か知らない町へ迷い混んだかのように、町全体が静まり返っていた。
走って、走って、ようやっとリズが立ち止まった時。
「こんばんわ、お嬢さん」
知らない青年の声に急に呼び止められたのだった。
後ろを振り向いても、まっすぐ前を向いても、人一人見当たらない。一体、自分を呼ぶのは誰だろうか?リズは
今度はぐるりと周囲を見渡した。
「こちらですよ。お嬢さん」
もう一度青年が何処からかリズを呼ぶ。
リズは自分の影の後ろにもう一つ自分より大きな影があることに気付くと、街灯を見上げた。
すると頼りなく灯る街灯の上から、見知らぬ青年がまっすぐにリズを見つめているではないか。
「彼方・・・誰?」
「こんな夜更けに、貴女のような若いお嬢さんが何処へ行くのですか?」
リズの質問には答えず、青年はリズに自分の質問を問いかけてきた。
ウサギのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて、リズは青年を見る。
青年はウサギのぬいぐるみを見て、おやと小さく首を傾げた。
「その封筒は・・・・貴女は招待客でしたか」
「え・・?」
青年はさっと、何メートルもあろうかという街灯の上から飛び降りるとリズの目の前に着地した。
蒼白い月の輝きが逆光になっていたせいでよく見えなかった青年の姿が、今度は月明かりに照らされてよく見える。
リズはその姿にはっとした。
「あの・・えっと・・・・」
「ああ、この姿ですか?失礼、お嬢さん。驚かせてしまいましたね」
リズの驚いた表情を見て、青年は困ったように笑う。
リズが驚くのも無理は無いだろう。青年の姿は、あまりにもリズとは違っていたのだから。
タキシードにシルクハット、キラキラと宝石が輝くステッキ。普通に見れば人間だ。
しかし、青年には大きなウサギの耳とお尻には小さな尻尾が付いている。
「お嬢さん、その封筒を見せていただけますか?」
リズが抱きしめているウサギのぬいぐるみを指差した。ぬいぐるみには謎の招待状がくっついたままだ。
「はい」
リズが差し出すと、どうもと小さくお辞儀をして青年は封筒を受け取った。
封筒の中からメッセージカードを出すと、ちらりと何かを確認している。
「ありがとうございました。それでは、お連れいたしましょうか」
封筒をリズに手渡すと、青年は反対の手をリズに差し出す。
この招待状になんの意味があるというのか、リズが躊躇していると青年は何かを悟ったようにリズに笑いかける。
「貴女は今夜の舞踏会に招待されたのですよ。その封筒が招待状です」
青年が封筒を指差した。
リズは封筒の中身のメッセージカードに書かれていた言葉を思い出してみる。
―今宵、蒼い月夜の舞踏会に彼方を招待いたします―
確かに、そう書いてあった。リズを蒼い月夜の舞踏会に招待すると。だが、リズには気がかりなことがある。
「でも、宛名も差出人もないのよ?本当に、私宛なのかしら・・・?」
リズが不審そうな瞳を向けると、青年は再度困ったように笑った。
「ならば、貴女はどうしてここにいるのですか?」
「それは・・・・」
月に呼ばれたような気がしたから・・・・リズは心の中で思う。
いつの間にか自分の元へ届いた招待状。
何処かから聞こえた誰かの声。
リズに何か訴えかけるような月の輝き。
何かに呼ばれたようにしてリズは家を抜け出してきたのだ。
そして、何かに導かれたようにこの場所まで走ってきた。
「月が・・・私を呼んだの・・・?」
「それが答えです。どうしますか?」
青年はもう一度リズに手を差し出す。
青年の手を取ればどうなってしまうかなど、リズには想像できない。
しかし、手を取らなければここまで来た意味がなくなってしまう。
青年を見上げれば、優しそうな笑顔を返される。
月を見上げれば、まるで「おいで」というかのように輝くだけ。
「どうされますか?」
もう一度青年がリズに問う。
「行くわ。私を連れて行って!」
リズは青年の手を取った。
知らない人について行ったら行けないよ、両親の言葉がリズの頭を過ぎる。
いつもはその云い付けをちゃんと守っているが、今日だけは破っても大丈夫。そんな気がしていた。
この青年を信じても大丈夫か、保障など無い。何より、リズは自分の直感を信じることにしたのだ。
「かしこまりました。お嬢さんお名前は?」
「リズよ。彼方は?」
「私は、レイノと申します。以後お見知りおきを」
レイノと名乗った青年は、自己紹介も早々にリズを抱き上げると、クルリとステッキを一回転させて見せる。
すると、風が一気に二人の周囲を駆け抜ける。
リズが驚く暇も無く、二人の姿はその場所から跡形も無く消えてしまった。
―出席者は集まった。紳士淑女のお客様、蒼い月夜の舞踏会へようこそ―
消える瞬間、そんな声がリズに聞こえた。
2へ続きます
今日はSSでは無く詩の雑記です。
叫んでも叫んでもこの声が誰かに聞こえることは無い
そう思ってた
でも、キミはきてくれたね
涙で濡れた、震えるこの手を握ってくれた
「僕が傍に居るよ」
そう言って、一緒に泣いてくれた
なのに、ねぇどうして?私を置いていってしまうの?
お願い、お願い・・!!!この手を離さないで!!
キミの姿が遠ざかっていくの・・もう見えない
キミもみんなと同じだったんだ
私を置いていってしまうのね
お願い、お願い・・・!!帰ってきて
涙で濡れた、震える私の手を握って
あの時みたいに強く、強く
キミが居てくれないと嫌だよ・・・・
☆コメント☆
昨日舞い降りた詩のようなもの。
ボカロ曲の聴きすぎなのでしょうかねー。鏡音さん家のリンちゃんが歌ってくれてるのがぱっとイメージされてしまいました。
我が家にリンが居たら頑張って歌ってもらうんだけどなぁ・・・・。
居ないから。ピアプロにでも置いてみようかと思います。え?歌詞にしては短いって?実は続きがあったりするのですよvv
しかも、かなり短縮されてるのでもう少し付け足したいと思います。
今回短いまま書いたのは、あくまでこれは雑記だからですよ。
最初は歌詞のつもりじゃなかったんだもん・・・・。うん、本当に。
もうちょいまとまったら、ピアプロに置いてみます。絵描いてからですね。一応ピアプロ初投稿は兄さんにしたいので。
ここで、詩の解説みたいなもの。()はリンレンに置き換えた場合のものですよ。
一人ぼっちの「私」。寂しいって叫んでも叫んでも誰にも届くことなんて無い。だって、周りには自分一人しか居ないから。
(リンが主役の場合はパソにリンレンしかインストールされてない状態です。リンがレンの存在に気付いていないと思って下さい)
寂しさに震えて、泣いているときに「キミ」が現れます。
(レンが一人ぼっちのリンを見つけたような)
傍に居るよって、言って一緒にいてくれる「キミ」でも、突然「キミ」が「私」の傍から居なくなってしまう。
(レンがリンを置いて姿を消してしまう)
「私」はまた一人ぼっちにされてしまい。寂しいと泣きます。
泣いても、泣いても。叫んでも、叫んでも。「キミ」は戻ってきません。
(また一人ぼっちのリン。レンに戻ってきて欲しいと一人泣きながら叫びます)
一人ぼっちは嫌だ。「キミ」に傍に居てほしい。そんな風に願っています。
(一人ぼっちにしないでってリン。レンが戻ってきてくれるように願っています)
ざっと書くとこんな感じです。リンレンがわからない方はニコ動かクリプトンとかで検索していただければと思います。
でわ、読んでくださった方。ありがとうございました。
日々精進、有言実行を夢見て生きてます。