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☆Last Up 2013.12.25 版権「※BL注意※欲しいものは一つだけ-2013 A・ミシェル生誕SS-
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―いつか、二人であの村があったところへ行こう―





愛しい人との約束だった。もう、叶うことのない約束になってしまった。
あの人は私を置いて逝ってしまった。私は彼が逝ってしまう事を知っていた。でも、決められた運命に逆らうことは許されない。
世界を変えてしまうことは・・・・・許されないの。
あの人も自分が死ぬことを知っていた。私が言えなかった事も知っていたわ。
でもあの人は私に問うことをしなかった。私の使命を知っていたから。
自分が死ぬことが運命だと、世界を救うことだと知っていた。



「笑ってくれよ?俺はお前の笑顔を見て死にたい・・・」


逝ってしまう時のあの人の言葉を忘れない。震える手で私の頬を撫でたあの瞬間を。
私の精一杯の笑顔はあの人にどう映ったのかな。
彼のために泣いてはいけないとわかっている。みんなが心配していることもわかっているわ。
でも、溢れる涙が止まらない。




取り戻してみせるから。私の命と誇りをかけて。
アレに囚われた彼の魂を取り返すのよ。
だって、約束したじゃない。約束を破ったら、承知しないわ。
私は逝ってしまった彼のために、全てをかける。アレと直接対峙する。あの人が輪廻の輪に戻ることが出来るのなら、私が壊れても構わない。
だって、次の未来はもう決まっているのだから。私がアレに引きずり込まれてしまったら、仲間達には危害が及ばぬように対処はしてある。











だから














怒らないで聞いて?今、彼方を迎えに行きます。















愛しています ただ、彼方だけを
居なくならないで欲しいと泣きじゃくった
居なくなってしまったと泣きじゃくった



彼方の死を無駄にしないと決めた
だから、彼方を想って泣くのは今日で最後にするの
これからは、彼方を想って前を向いて歩いて行きます



輪廻の輪からは外させない
私が絶対に外させない
だから



次の未来で待っています
あの約束は
次の未来で果たしてください














☆コメント☆

日記用の絵を描いていたら出来てしまった雑記です。
これはオリジキャラのミントが主人公でしかもミントが語ってます。


ミントの昔の恋人が死んでしまった時からのミントの想いですね。何にも変えがたい愛しい人。
彼が死んでしまうことを知っていても、守りたくても何も出来ません。やってはいけないのです。なぜなら、その世界で起きている争いは彼が死ななければ正しい方向へ進めないからです。
この辺の設定は、オリジキャラ設定あたりにUPしてあります。興味があったら、覗いてやってくださいまし。この雑記に出てくる「彼」に事ももう少ししたらUPしたいなぁと思ってます。
愛しい人のために強くなろうとする女性。ミントはそんな子であって欲しいですね。




一気にぶわっーと書いてしまったので・・・・いろいろすいませんな事になってる感が否めません。orz
まだまだ勉強中です。日々精進ですね・・。いつもいつも駄文ばっかで申し訳ないです。
次はポップンで更新したいなぁ・・・・。



では、最後までお付き合いありがとうございました。
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Nous qui sont à côté de l'un l'autre comme un miroir
(鏡のように隣り合う僕ら)

Réunissez des mains
(手を合わせて)

Hé, j'entends le même battement
(ほら、同じ鼓動が聞こえる)

Je suis seul avec deux personnes
(二人で一人)

Comme pour nous, frère, nous sommes des jumeaux
(僕らは兄妹、僕らは双子)







この世に生を受けた時も、この世の空気を初めてお腹いっぱい吸い込んだ時も、一緒。
一目見ただけで彼らを見分けることなんて不可能だ。だって、同じ顔をしているのだから。
独特の世界観を持ちそれを共有する。言葉で語るよりも、心で語るほうが早い。
彼らの世界は彼らにしかわからない。見えぬ糸が、見えぬ絆が彼らをつないでいる。





まさに、以心伝心





兄が裏なら妹は表。兄が闇なら妹は光。顔は同じでも性格も同じとは限らない。
お互いに無い物を持っているのだ。だから、お互いを求め合うのだ。
互いの傍が心地良い。互いの傍が彼らの居場所。
そんな彼らを彼方は無情にも引き剥がすのか・・・・・・。彼方にそれが出来るのでしょうか?
いや、絶対に出来まい。彼らが絶対にそれを許さないのだから。









彼らを引き離してはいけない。









Je suis toujours par le côté
(いつも傍に居る)

Je ne le laisse jamais
(絶対に離れるもんか)

Il va bien et nous sommes des jumeaux
(大丈夫、僕らは双子だ)

Je suis où même si est séparé et
(引き離されても、何処に居ても)

Je peux rencontrer immédiatement
(すぐに会える)















☆コメント☆

思いつき雑記のお時間がやってまいりましたぁー。←
今回のテーマは「双子」でございます。タイトルの「jumeaux(ジュモー)」とはフランス語で「双子」という意味の言葉です。
そして、最初と最後の文もフランス語です。こちらは翻訳サイト様を使わせていただきました。



双子って良いなぁーって思います。まぁ・・・彼らには彼らなりの悩みとかもあるのでしょうけど。
私自身、双子が良かったなって思うことがしばしばあります。
言わなくても、なんとなく思ってることがわかる。無条件で彼方が大切。双子って、何処か神秘的な感じがします。双子って素敵ですねvv
何で突然こんなこと書いたかというはですね。きっとそのうちわかりますよー。ただいえるのは、鏡音さんちのお子様たちやポップンのツインズの影響ではないという事です。
きっと、勘の良い方はすぐにわかってしまうのではないかと思います。そんな単純なヤツです。私。
「兄妹」というのがミソですね。←



身内に双子生まれないかな・・・・。双子で双子座だとなおのこと創造力掻き立てられるのに。



でわ、最後までお付き合い頂きありがとうございました。
















七月七日の七夕に願いを書いた短冊を笹に吊るすと星が願いを叶えてくれる。
そう教えられた。
天の川を渡って織姫と彦星が年に一度だけ再会できる・・・特別な日。
そんな七夜の彼方の願い事はなんですか?







































☆七夕小説ー七夜の願い事ー☆


























「食堂の笹に吊るすから、お願い事書いてね」
数時間前にそう言って手渡された長方形の黄緑色の紙。
たった今のコーラルの悩みのタネだ。母親代わりのフェアに渡され、頷いたものの肝心な願い事が見つからない。
紙をじーっと見つめたり、部屋をトコトコと歩き回ったりしてみるが、一向に願い事は見つからなかった。
「そうだ」
ぽんと手を叩くと、おもむろに部屋を出て行った。
見つからないのならみんなの願い事を参考にしてみよう。そう思いついたのだ。
食堂へ降りていくと大きな笹がドンっと置いてある。しかし、肝心の願い事を書いた短冊がまだ一つも吊るされていない。
笹の下に飾りの入った箱が置いてあったが、コーラルが渡されたような長方形の紙・・短冊は一枚も入っていなかった。
「おや、皇子(みこ)殿(どの)」
「セイロン・・・」
笹の周りをきょろきょろしていると、後ろから御使いの一人のセイロンがいつの間にかコーラルの後ろに来ていた。
セイロンを見上げると扇子を持った逆の手にコーラルが渡された紙と同じような赤い紙を持っている。
「店主殿に渡された短冊を吊るしに来たのだが・・・まだ準備が出来ておらぬようだ」
赤い短冊をひらひらと宙になびかせてコーラルの後ろにある大きな笹を見上げた。
どうやら、セイロンはコーラルが見つけられない願い事をもう見つけてしまっているらしい。
「セイロンの・・・オネガイゴトって何?」
ひらひらと動く紙に合わせて顔を動かしながらコーラルがセイロンに問うた。
セイロンは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに何かを悟ったかのように笑った。
「我の願い事でございますか。後で、ここへ見に来ると良いでしょう」
それから、コーラルの耳元へ近づくと「我以外の者へ聞いた方が参考になりましょう」そう言ったのだ。
どうやら口答する気は無いらしい。セイロンは笹へ短冊を吊るすのを止めると、そのまま何処かへ行ってしまった。
願い事を必死に考えているコーラルを残して。








あれから数十分が過ぎ、セイロンの助言通りに思いつくか限りの仲間のところへ出向いていた。
最初に御使いの一人であるリビエル、その後にはもう一人の御使いのアロエリの所へ。
「わたくしの願い事なら、たった一つですわ。もっと立派な御使いへ成長することです」
「オレの願いですか。戦士として、御使いとしての精進。そして何より、敵を倒すことです」
御使いとして真面目に勤め、少しでも成長しようとしている二人の願い事はコーラルの願い事探しにはあまり
参考にはならないのかも知れない。
でも、少なくとも自分のために頑張ろうとしている彼女達の願いは立派だとも思う。
次は食堂でご飯をがっついているシンゲンに話を聞いてみることにした。
「私はもう、真っ白いご飯と美味しい梅干があれば!何にもいりませんよ」
それは、願いではない。コーラルはそう思ったが、あえて口には出さずに美味しそうにご飯を食べるシンゲン
を見つめていた。
その後、裏庭でアルバを見つけたがあいにく剣の修行中だった。
邪魔をしては悪いと思い次の誰かを求めて歩く。気付くとミントの家の前まで来ていた。
「コーラルちゃん?どうしたの?」
庭でさまざまな世界の野菜を育てている蒼の派閥の召喚士であるミント。
彼女からは少なからず参考になる願い事が聞けそうなそんな気がしていた。
「私のお願い事?そうねぇ・・・もっとお野菜の研究が出来るようになれば良いな」
にっこりと微笑むと畑の方に目をやる。オヤカタもうんうんと頷いていた。
「それとね。早く、戦いが終わると良いな。そうしたら、もっとコーラルちゃんともたくさんお話が出来るもの」
ミントの言葉で少しだけわかった気がした。何かが思い浮かんだような気がした。
でも、その何かはすぐに泡のように消えてしまう。わかりかけたコーラルの願い事。









ミントの家から帰ってくると、裏庭にいたはずのアルバが居なくなっていた。
どうやらコーラルが出かけている間に剣の修行は終わってしまったらしい。
アルバの部屋へ行くと今度は剣の手入れの最中だった。
ひかえめにノックをしてドアから顔を出すコーラルをアルバは快く迎え入れてくれる。
「おいらの願い?やっぱり、立派な騎士になることかな」
見習い騎士のアルバの夢でもある願いだった。
「そうか、コーラル。短冊に書く願い事が決まってないのか?」
ズバリと確信を突かれてしまったが、コーラルはこくんと頷いた。ずっと、ずっと考えているが見つからない。
いろんな仲間に聞いたことなど、今までの経緯を全て話した。
それでも、コーラルの願い事は見つからない。ミントのところでわかりかけたものは一体なんだったのだろうか。
「そうだな。願い事なんてのは、今の自分がどうしたいかで良いんじゃないのかな」
「僕の・・・したいこと?」
アルバが頷く。コーラルはじっと考えてみた。今の自分がしたいことをゆっくり、ゆっくりと考えてみる。
アルバは剣の手入れを終えるとそんなコーラルの様子を何も言わずに見守った。
今のコーラルはフェアや仲間達と一緒に毎日を過ごしていられる事で幸せ。何も望むものなんて無い。
少なくとも今は一緒にいられる。
では、これから先はどうなるのだろうか。明日敵が攻めてきて、自分はみんなと離れ離れになってしまうかもしれない
そんなことはきっとフェアが許しはしないだろう。何があったって、コーラルを敵に渡しはしないはずだ。
他の仲間だって、コーラルを守るために全力を尽くしてくれる。
戦いが終わった後、フェアは自分の事を今と同じように接してくれるだろうか。
もう子供じゃないと突き放したりはしないだろうか。
何故だかそんな不安ばかりが頭を駆け巡った。
「僕は・・・ずっとみんなと居たい。ずっと、フェアの・・・お母さんの子供で居たい」
思わず出た言葉。
ハッとして、アルバを見ると何故だかにこにこと笑っている。
「それで、良いんじゃないかな」
「え?」
アルバの予想もしない言葉にコーラルは驚いてしまう。
怒られると思っていた。こんな身勝手な願いを口にしてしまったことを。
みんなは戦いを終わらせるために一生懸命戦っているのに。
他でもない、町の平穏とコーラルを守るために。
でも、戦いが終わってもみんなと一緒に・・・フェアの子供でいたい。その願いは本心だった。
「みんなと一緒に居たい。すごく、コーラルらしい願いじゃないか」
「でも・・・・身勝手だよ・・・?」
「身勝手なもんか!戦いが終わっても・・・・ってそういうことだろ?」
くしゃくしゃとコーラルの頭を撫でると、確認するようにアルバがコーラルの瞳を覗き込む。
コーラルは黙ってこくんと頷いた。







急いで短冊に願い事を書き込むと、食堂へ下りていく。
すると、リシェルやルシアンがフェアと一緒に綺麗に笹に飾り付けをしていた。
良く見ると、すでに短冊が数枚吊るされているのがわかる。ふと見るとセイロンがにこにこと微笑んでこちらを見ていた。
その目はまるで「お願い事は見つかりましたか?」と言われているようだ。
「フェア・・・オネガイゴト書いて来たよ」
ワザと裏返しにしてフェアに手渡しする。すると、短冊に穴を開けて紐を通してくれた。
「好きな所へ吊るしてみて!何処が良い?」
大きな笹を見上げて、吊るす場所を探す。あまり他の仲間が見える所には吊るしたくない。
なんだか、ちょっぴり恥ずかしい気持ちだからだ。
「あそこ・・・」
「って、あんな高いところに誰が吊るすのよ」
コーラルが指差したのは大きな笹の天辺より少し下。かなりの高い位置で普通の人間なら先ず届かないような所だ。
リシェルがびっくりして声を上げる。肩車をしても届くような位置ではない。
「アロエリ・・・僕を抱えてあそこまで行ける?」
「皇子様をあのような場所へお連れするくらいなら!オレが吊るしてきます!!」
落ちたら軽傷では済まないのだ。竜の子を守る御使いがそんな危険を犯すようなは所へ連れて行ってくれる訳が無い。
アロエリはコーラルに短冊を渡してくれるように説得をしようとした。
「お連れしてさし上げなさい。アロエリ」
「しかし!セイロン!!」
黙って見ていたセイロンがアロエリに連れて行くように促す。
アロエリは不満そうにセイロンを見た。リビエルも何かを言いたそうにセイロンを見ている。
「我にはお主が皇子殿を落とすなどといった失敗はしないと、踏んでおるのだが?」
扇子を広げるとアロエリに向かって言う。竜の子を守る御使いが守るべき竜の子に怪我を負わせるなどありえないはず。
ましてや真面目な性格のアロエリだ。コーラルを落とすなどそんな失態をするわけが無い。
コーラルもセイロンと同じ確信を持っていたのだ。
「それに皇子殿の願いはそれだけ叶って欲しいものだと我は思うておる」
「どうして・・・・?」
「なぁに。ちょっとした小言よ。願いを書いた短冊は、高い所へ吊るすと良い・・・・とな」
扇子で天井を指し示して言った。
コーラルはじーっと無言の訴えをアロエリに向けている。アロエリは多少困り果てている様子だ。
リビエルがなおも何か言いたそうなのをルシアンが必死に宥めていた。
「わかりました。お連れしましょう。今回だけですよ?皇子様」
コーラルの無言の訴えにとうとう折れたアロエリはしぶしぶ承諾してくれた。
今回だけという条件にコーラルはこくんと頷く。
セイロンの話が本当であっても、そうでなくても。何故だか高いところへ吊るしたらこの願いが叶うのではないか。
そんな確信も何も無い思いがコーラルの頭を掠めた。
探して、探して、やっと見つけたコーラルの願い事。
叶うかどうかはわからないけれどほんの些細な願い事を笹に、星に託してみるのも悪くわない。
自分の短冊を吊るすついでにセイロンの赤い短冊を探してみるが、高いところには見当たらなかった。
結局のところコーラルにも他の誰にも自分の願い事を教える気はセイロンにはなかったのかも知れない。
「みんなのお願い・・・叶うと良いな」
誰にも聞こえないように一人呟いてみる。自分の願いだけでなくみんなの願いも叶うと良いと思う。
みんなの願い事も、自分の願い事も巡る星がきっと叶えてくれるだろう。
必死に考えたコーラル自身の願い事。思えばすっと願い事を考えていた気がする。
そんな生まれて初めての七夕だった。































「フェアやみんなとずっと一緒にいられますように。ずっと、フェアの子供でいられますように
                                       コーラル」










































素敵な素敵な彼方の願い事。
きらめく星達が叶えてくださいますように。



















END


























6月からの梅雨の時期。
毎日のように降り続く雨。







今日は朝は晴れていたと言うのに今は土砂降りの雨が降っている。急に降り出した雨に人々は不満の声を上げながら、鞄やら紙袋やらを傘代わりにして走り出した。
「・・・・・・・」
そんな外の様子を無言で見つめている二つの小さな影があった。
精霊界創造の魔女ミントのところへ身を置く、雷の精霊ヴォルーナとそのパートナーもライザだ。慌しい外の様子をただじっと、無言で見つめている。
やがて、ヴォルーナが窓辺を離れるとライザも後へ続く。何処へ向かうのかと思いきや玄関にある薄い黄色のレインコートを引っ張り出した。
「おいおい、ちびすけ。そんなもん出して何処いくんだよ」
土の大精霊ロックがヴォルーナを呼び止める。
「雨・・お姉ちゃん・・・・・迎えに行く」
玄関から見える窓を指差した。確かに、外は土砂降りの雨だ。
彼女達の主であるミントとその護衛であるプラムが所用で出かけている。ミント達がここを出たときは外は雨など降っていなかったのだ。きっと傘など持って行っていないに違いない。
「お嬢達が傘無いってなんでわかる?」
もしかしたら、持って行っているかも知れない。ロックは何とかヴォルーナが外へ出るのを止めようとした。誰か一緒ならば問題は無いのだが、今はロックとヴォルーナ以外は何かしらの任務についている。
そのためロックがヴォルーナと一緒にここを空けることは出来ないのだ。
ましてやヴォルーナはまだ10歳だ。パートナーのライザが居るとはいえ、ヴォルーナ一人を外へ出すなど心配で仕方がない。
「お約束の時間・・・・・過ぎても・・帰って来ない・・よ?」
ヴォルーナがポツリと言う。ライザは「うんうん」と頷いた。
ロックが壁にかけてある時計を見やると、確かにミントが帰ってくると言った時間を大幅に過ぎている。それに、傘立てを見るとミントの水色の傘がしっかりと入っていた。
「わかった。じゃあ、オレが行って来るからお前は留守番してろ。良いな?」
ヴォルーナの頭を撫でながら、諭すように言う。
すると、ヴォルーナはライザの腕を掴んで「イヤイヤ」と首を振った。御揃いのレインコートと長靴を履いて、じっと玄関に立ってロックの顔を見つめる。
どうやらこの一人と一匹(体)はどうしてもミント達を迎えに行く気らしい。こうなってしまってはロックにはどうすることも出来ない。こういう時のヴォルーナを動かすことが出来るのは、主であるミントとヴォルーナの教育係を任されている、水の大精霊アクアだけだ。
はぁ・・・・とロックは大きくため息を付くと、靴箱の上に置いてあるメモ帳に何やらさらさらと書きはじめた。
「ほれ、コレがお嬢達が出かけたとこの地図な。落とすんじゃねぇぞ?」
書いたメモを見せながら簡単に説明してやると、「こくん」と小さく頷いてヴォルーナはそれを受け取った。二回折って、レインコートのポケットにしっかりとしまいこんだ。
「それから、それ見れも迷子になったら。バトルの時みたいにすぐ呼ぶんだぞ?」
ロックが自分の額を指でトントンと軽く叩く。すると、ヴォルーナはもう一度「こくん」と小さく頷いた。敵との戦闘中に仲間である他の精霊達との連絡をとる手段。つまりテレパシーだ。
普段の生活で使うことはあまり好ましいことではないが、場合が場合だ。それに、たとえ咎められたとしても理由を話せば仲間達も納得してくれるだろう。
「よし、じゃあ行って来い!」
ポンポンと頭を撫でてやると、またヴォルーナは「こくん」と頷いた。
くるりとロックに背を向けると、傘立てからミントの水色の傘を引き抜き外へ続く戸を開ける。
「お兄ちゃん・・・」
「んぁ?」
「ありがとう・・・・行ってきます・・・・」
「おぅ、行って来い」
背を向けたまま少し恥ずかしそうにヴォルーナが言った。
ロックは普段ヴォルーナにお礼を言われることなどほとんど無い。少しばかり驚きはしたものの外へ出て行くヴォルーナの背中をそっと送り出した。
(帰ってきたお嬢に怒られませんように)
そんなこと思いながらではあったが・・・・・。





















大きな水溜りの中をざぶざぶと歩きながら、ヴォルーナとライザはミント達の元へと歩いていく。
時折立ち止まってはロックに渡されたメモを見る。ライザと相談をしていく道を決めた。
ライザと御揃いの薄い黄色のレインコートと濃いピンク色の長靴。これらはヴォルーナの大好きな主、ミントが用意してくれたものだ。
もうすぐ梅雨の季節だからと、ミントが新しいレインコートと長靴を用意してくれた。いつもはヴォルーナの分だけなのだが、今回はライザの分もある。しかも御揃いだ。
ライザと御揃いのレインコートが着たくて、御揃いの長靴が履きたくて、早く梅雨の季節にならないかなとヴォルーナはずっと思っていた。
「ライザ・・・・・道そっちじゃないよ」
ヴォルーナはライザと御揃いなのが嬉しくてしょうがなかった。どうしても、ライザと一緒にこのレインコートと長靴を身に着けて雨の中を歩きたかった。
だから、ロックに無理を言って外へ出てきたのだ。我がままを言ってしまったのがミントに知れれば、怒られてしまうだろうか。そんな不安も少しはあった。
「怒られると思ってんのか?」
メモを見て少しだけしょんぼりとしたヴォルーナの顔をライザが覗き込む。
ヴォルーナは小さく「こくん」と頷いた。レインコートの帽子にポツポツと当たる雨の音が少しだけ大きく聞こえる。
「怒られる時は俺様も一緒だろ」
くいくいとヴォルーナのレインコートの裾をライザが引っ張った。
いつも一緒。絶対に離れることの無い一心同体。親友のようなパートナーのような姉弟のようなかけがえの無い存在だ。ライザはヴォルーナの母親が亡くなってからずっと一緒に居る。亡くなったヴォルーナの母が残した形見の人形なのだ。
「そうだよね。ライザと・・・・ヴォルーナは・・いつも・・・一緒」
そうだ、悪いことをしてしまって怒られる時はいつもライザと一緒だった。嬉しそうに笑うと、しっかりとライザの手を握った。
もう一度メモを見てゆっくりと歩き出す。目の前に見える信号を渡って右に曲がるとミント達がいるであろう建物はすぐだ。

















「困ったわねー。まさか雨が降ってるなんて思わなかったわ」
用事が済んでいざ帰ろうと外へ出てみると土砂降りの雨がお出迎え。傘を持っていないミントとプラムは困り果てながら、雨宿りをしていた。
「油断しましたねぇ・・・」
雨は一向にう止む気配がない。
それどころか時間が過ぎれば過ぎるほど酷くなっていっているような気さえする。
「いっそのこと走って帰りましょうか?」
「駄目です。ご主人様が風邪でも引いたらどうするおつもりですか」
雨の中に飛び込もうとするミントの腕を目にも留まらぬ速さで阻止した。
しかし、そろそろどうやって帰るか決めてしまわないと精霊達が心配しているころだろう。走って帰るか、止むまで待つか選択は二つに一つだ。
「僕は濡れても構いませんが、貴女が濡れてしまっては困りますね」
「まさか、服脱ぐなんて言わないでしょうね?」
「おや、正解です」
ミントが訝しげな目を向けると、プラムはにっこりと微笑む。
そして、上に着ている服を脱ごうとした。
「ちょっと待った!!!!ねぇ、あれってさ・・」
道の向こうから歩いてくる小さな二人組みが見える。見覚えのあるレインコートと長靴。鮮やかな紫色の髪の子供と大きな二つの耳を持ったウサギのような姿。
ちょこちょことこちらへ向かって歩いてくるように見える。
「!・・・お姉ちゃん・・・!お兄ちゃん・・・!」
ミントとプラムに気付くと、鮮やかな紫色の髪をした子供がたっとこちらへ駆け寄ってきた。
「ヴォルーナ!?」
「では、もう一人はライザですね。まさか、二人で迎えに・・・?」
駆け寄って来る子供はヴォルーナとライザだ。
二人の後ろから誰かが歩いてくるような気配はしない。どうやら、二人だけでここまで来たようだ。
「どうして、ここに?」
レインコートの帽子を外しヴォルーナとライザの顔を交互に見た。ヴォルーナとライザはすっとミントの水色の傘を差し出す。
「雨・・・降ってきたから・・・・お迎え・・・来たよ」
「俺様とヴォルーナに感謝しろよな」
ニッと笑うライザに、ミントとプラムは顔を見合わせた。
確かあそこには土の大精霊ロックに留守を任せて来たはずだ。同時にヴォルーナとライザを見ておくように言っておいたはずなのだが。
「ロックはどうしました?」
「ロックお兄ちゃん・・・悪くないよ・・・?」
プラムの問いに首を左右に振りながらも、ヴォルーナは訴えた。
不思議そうにミントがヴォルーナとライザを見る。どういう事なのだろうか、二人を迎えに来るのならば当然ロック一人か、ロックを含めた三人で来るものと思っていた。
「ヴォルーナが・・・・ライザと・・・・行くって言った。ロックおにいちゃんに・・・・言った」
「あいつはしぶしぶOKしたんだぜ」
ヴォルーナとライザの訴えにミントとプラムはもう一度顔を見合わせ、今度はお互いににっこりと微笑んだ。それから、ミントはヴォルーナとライザ二人の頭をくしゃくしゃt撫でた。
「そっか、よく二人で来られたね?偉いぞー」
するとヴォルーナとライザは嬉しそうに笑った。二人の今日一日での最高の笑顔だ。滅多に笑顔を見せることの無い二人の最高の笑顔。
「帰りましょうか」
ミントが言うと、ヴォルーナとライザが「こくん」と大きく頷く。
くるっと振り向くと目の前にある大きな水溜りにザブンっと勢い良く入っていった。
ミントの傘を広げる、そこまでは良いのだが。そこからどうしたものか、ヴォルーナが持ってきてくれたのはミントの傘一本のみ。つまりプラムの分の傘は無いのだ。
一本に二人で入ろうにもプラムのことだミントが濡れないようにすることを最優先に選ぶのに決まっている。
「猫になりなさいね?」
「・・・貴女にはかないませんね。かしこまりました。では肩の上をお借りしますね」
ミントに先手を打たれ、仕方なしにプラムは黒猫の姿になるとトンとミントの肩に乗っかった。ミントの肩の上は黒猫の姿になったプラムの所定位置だ。
プラムが肩に乗ったのを確認すると、ミントは傘を差してヴォルーナ達の後を追いかけていった。
「よっぽど、御揃いが嬉しかったのね」
「あの子達は姉弟のような感じですからね」
この日を境に雨の日のお迎え係りが、ヴォルーナとライザになったのは言うまでもない。これからまだまだ雨の降る季節。













次に彼方のお迎えに来るのはそんなヴォルーナとライザかも知れません。















END


















☆コメント☆

雨の日に書こうと思っていた、オリジっこの雨の日雑記です。
書こうと思った時になかなか雨が降らずに今日がやっとのUPになります。いや、ぶっちゃけ雨は降らなくてもいいのだけどね。←
コレを読んでいる時に、皆さんの地方で雨が降っているといいです。その方がきっと雰囲気感じてもらえると思いますし。


今回のはオリジっこの二人(?)がメインの雑記です。
ヴォルーナとライザのコンビ。読んでて気付いた方がいるかと思われますが、文中み出てくる御揃いのレインコートと長靴とは、トップ絵のアレです。(笑)
実はアレを描いてる時に浮かんだネタだだったのですよ。なので、アレはそういう場面なんだって思っていただければ幸いです。
御揃いにしてもらったレインコートと長靴を早く活用したくて言った、ヴォルーナの小さな我がままですね。ほら、子供って新しいものを手に入れると早く使いたがるじゃないですか。そんな感じですね。
しかもそのとき丁度ミントとプラムが傘を持たずに出かけてたのです。
コレは行かずにいられません。さっそく準備をしますが、案の定保護者(っていうかこの場面では監視役みたいな感じですが)に見つかってしまいます。
留守番してろって言われても引きません。頑固一徹ですよ。←使い方間違ってないか?
何故でしょうね。一応ヴォルーナは10歳設定なのですが、必要以上に幼くなってしまう気がするんですよね・・・・。あんまり喋らない子って設定だからなのかな。
今回はほのぼの家族なイメージを目指したので、そんな雰囲気が出てるといいなって思います。



では、意味不はコメント含め最後まで読んでくださった方ありがとうございました。




硬く閉じられた扉の向こうには何がある



高い高い塀の向こうはどうなっている



中の世界しか知らない外の世界を知らない



外の世界を知ろうとも思わない



だって、それは過ぎた願いなのだから



ああ、まさに君は







いつもと変わらない景色にいつもと変わらない毎日。
朝起きればいつものように両親に挨拶すると、いつもと変わらぬ時間を過ごす。
高い高い塀の中に少女は一人。会話をするのは近くの森からやってくる小さな動物達だけ。人間の友達などいようものか。少女は学校に行っていない。
生まれてから数回しかあの高い塀の向こうに行ったことが無いのだ。少女が塀の外へ出ることを両親が許さなかった。
だから、外の世界を知りたいなどと少女は思わない。幾ら願っても叶う事の無い願いなのだから、思うだけ、願うだけ無駄だ。いつしかそう思うようになっていた。
少女は知っている。両親が自分を外へ出すのを許さない理由を。

「私が他の子供と違うから」

少女には不思議な力があった。
人間ではないモノと会話が出来る・・・他人から見れば普通ではないのだろう。
妖怪、幽霊、動物、植物ありとあらゆるモノの声が聞こえる。話が出来る。少女の力に両親は驚愕し、絶望した。何にも触れられぬように、誰にも悟られぬように両親は少女を屋敷の中へ閉じ込める。ありとあらゆるものから少女を守るために。


「お前、また私に会いに来たの?」


1匹の小鳥。蒼く輝く美しい翼を持った小鳥。
毎日のように少女の庭へ飛んでくる。
少女の肩の上に乗ると、何やら悲しそうに鳴いた。



「駄目よ。私はここからは出られないのよ」



小鳥は「会わせたい人が居る」と言った。この塀の向こうへ行こうと。しかし、少女は塀の向こうへ行くことを許されない。
外の世界を知りたいとは思わない。だって、それは過ぎた願いなのだから。
もう、外の世界を知ることはずっと前に諦めた。



「私にもお前のように翼があれば良かったのにね」



そうすれば、あのような高い塀も軽々と飛び越えていけるのに。
外の世界を知ることを諦めずに済んだかも知れないのに。
少女はこれからも外の世界を知ろうとは思わないだろう。ずっと、ずっと前に願うことを祈ることを止めてしまったのだから。知ることを諦めてしまったのだから。
小鳥はもう一度悲しそうに鳴くと、少女の肩の上から飛び立つ。
何度も何度も少女を振り返りながら塀を越えて姿を消した。
蒼く輝く美しい翼を持つ小鳥。もう、私に会いに来てはいけないよ・・・少女は小さな音にすら聞こえないような声で誰もいない空に向かって呟く。
少女をずっと見守ってきた、祖母のような大木が「可哀相な子だね・・・・」いつものように残念そうに、哀れむように枝をカサカサと鳴らす。



「いいのよ。これで・・・」



今の暮らしに不自由など何も無い。
少女は外に出てはいけないのだ。ずっと、両親にそう言われてきた。
今更外の世界を知りたいだなんて・・・・・・・。










硬く閉じられた扉の向こうには何がある



高い高い塀の向こうはどうなっている



中の世界しか知らない外の世界を知らない



外の世界を知ろうとも思わない



だって、それは過ぎた願いなのだから



幾ら祈ったところで、願ったところで



叶うはずなんて無い



だから、願うことも祈ることももう止めた



ああ、まさに君は



籠の鳥



籠の鳥が外に出たいと



再び願う日は、祈るときは



来るのでしょうか・・・・・・?

























☆コメント☆

えーと・・・・なんてコメントしていいのか。
半分衝動で書いたものなので、「籠の鳥」という言葉の意味を履き違えてそうで怖いです。
いつもとはちょっと違う雰囲気で書いてみました。閉鎖空間に閉じ込められた少女の話。まぁ、今のご時世にこんなのがあるかなんて想像もできませんんね。



解説としては。
他の子供とは違った力を持った少女を、両親が家の敷地内から外へ出さないのです。
理由としては、外敵から大事な娘を守るため。少女だってそんなことはわかっています。
だから、外の世界を知りたいと思う事を止めた。知りたいと思う心を押し殺して封印してしまったんです。
それをどうにかしたいと思っているのが、蒼い小鳥さん。
少女の決心は固く、ちょっとやそっとじゃ揺らぎません。と、言うかもう外へ出るのは不可能だと思い込んでいるのです。
↑の文章では「駄目だ」って言われて、すぐに引き下がっちゃいますよね。もっと粘れよ!!鳥!!って思った方が多分いるのではないかと。
すぐ引き下がってしまっても、小鳥は何回でも少女のもとへやってくるのです。「外へ出よう」って言いに来るんです。


さて、この後の話は今のところ書かない予定。
なのでこの後の展開は読んでくださった皆様のご想像にお任せ致します。え?無責任?違いますよ。それぞれの解釈の方が、楽しいでしょ?

では、呼んでくださった方ありがとうございました。
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